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2010年5月24日 (月)

エピソードー1:「Softly as in a morinig sunrise」

<この曲は、1928年にミュージカル、ニュームーンから生まれたスタンダード曲、MJQやウイントン・ケリー、またロリンズやコルトレーンのヴィレッジ・バンガード盤などが有名盤である。ピアノではソニー・クラークもあるが、やはり、ケリー・ブルー(Riverside)に入っているケリーのトリオによる演奏は軽快にスイングする内容で好きだ。「朝日のようにさわやかに」と邦題があるが「さわやか・・というニュアンスの歌ではない。>

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NY・スタンウエイ・コンサートグランド、1965年製、かなり使い込んである代物だ。調律と修理を繰り返して何とかまともな音が出るようになったが、ポンコツと言えばそれまでだ。

でも、このオーナーはこのピアノの左手の中低音部を気に入って、やたらと自慢している。

店のスタッフは三人、キッチンをあずかるコックの「長さん」こと長山茂、趣味はオートバイで磨きの入ったイタリヤ製のドゥカッティでいつもご出勤だ。

そしてフロアー一切を切り盛りする「ヤマ」こと山本隆夫、レジとクロークをあずかる紅一点「ヨーコ」こと佐野庸子これにオーナーの小野田善一がピアノを弾く。

弾くといっても1年ほど前までは弾かなかった、「俺は人前では弾かない」と頑なに拒んでいたのだが、それまでいたピアニストの河田吾郎が「ちょっとニューヨークへ行く」と言って行ってしまった。

何人か聴いてみたが後任のピアニストに気に入ったのがいないのでしょうがなく、昔とった杵柄で自分が弾き始めた。

口癖は「おれはケリーが好きだ」で学生時代にはウイントン・ケリーをコピーしてかなりのめり込んでいたらしい。

「俺は正規の音楽教育は受けてなんかいないし、今の音大出の連中にはかなわないから」と人前で弾く事はなかったが、ある夜アフターアワーズでお客も帰ってしまった後、この河田吾郎がカウンターで一杯飲んでいるいる時に冗談で弾いた「Softly as in a Morining Sunrise」、これを聴いて河田が「ゼンさんのピアノ、いいね、このスタンウエイとフレーズがあっているよ」と、彼はピアノの音色とフレーズのコンビネーションを誉めてくれた。

これと彼が辞めたことで、自分で弾くようになった。

店にはドラムセットとベースは置いてあったが、今ではトリオでやることは仲間が来たときくらいだ。

この店もジャズクラブのご多分にもれず、繁盛して儲かったという話を聞いたことはない、しかし何故かいつも小奇麗な内装を保ち、さびれた風はない。

食事は出さない、酒とツマミ、ツマミは何故か和風で味は美味しいと誰しもが言う。

フロアーを仕切っている「ヤマ」も中背の痩せ型でちょび髭をはやしてそれが様になっているし、店の中の歩き方やテーブルへの皿やグラスの出し方、引き方など、ギャルソン以外の職業はできないと思えるほどで、特に人の名前と顔を覚えるのが早いのはこの職業には打ってつけだ。

少々腕に覚えがあるらしく、ある夜酔客が酔って暴れたときには手を出さずに、でもシッカリと腕を逆手に取って店の外に放り出してしまった。以前、吉祥寺のジャズ喫茶で働いていたが経営者が少々ものを書いて売れ出し、鼻持ちならなくなってソリが合わず辞めて来たところを採用した。

皆に「ヨーコちゃん」と呼ばれている元OLでジャズが大好きで一度は20代の終わりに結婚したものの2年あまりで別れてしまい、一人暮らしで好きなライブ通いをしているうちにOLより性にあっているとアルバイト志願してきたレジの紅一点。

店の趣味をオーナーの一徹で通し、自分の思い通りに経営してゆくなんて、儲かってもいなさそうだし、店のやり繰りはさぞかし大変なのだろう。

オーナーの「ゼンさん」こと、小野田善一の素性は・・・。

(続く)

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