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2010年6月18日 (金)

エピソード11:「ジャケットを飾ろう、そしてキャンボール・アダレイの思い出」

ゼンさんは店の内装を変えるにあたり、先日来考えていた飾るジャケットに苦労していた。

30cm角のLPジャケットを飾る額縁が届いたので、このフレーム5個に先ず何を入れようか・・・。

ゼンさんの作ったリストは以下の通りで、いくら後で入れ替えればと言っても迷ってしまう。

当然の如く決まっているのは、HORACE SILVER「Blowin’The Blues Away」でこれはジャケット最高傑作と信じている。ゼンさんのパソコンの壁紙はこれをデジカメで撮影して貼っているくらいだ。

では2番目以降は・・・・

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2、Hank Mobley「Work Out」

3、T.Monk「Monk’s Dream」

4、Bobby Timmons「Born To Be Blue」

5、Miles Davis「Kind of Blue」

6、J.Cannonball Adderley「Cannonball In NewYork」

7、Roland Hanna「Perugia」

8、John Coltrane「Blue Trane」

9、Sonny Rollins「橋」

10、Eric Dolphy「Out To Lunch」

まだこの後におよんで、Blakeyは何が良いかと迷うし、Sonny Clarkの油絵風もいいし、MONKはキリコの絵のジャケットもいい。

ブルーノートやリバーサイド、プレステッジには限りなく良いジャケットがある。

Garlandの「Groovy」も捨てがたい。

Petersonの「Londonhause」もあるし・・・。

マニアックにCarmel Johnsの「Remarkable Carmel Johns」も雰囲気出している。

Milesは自分の写真を出しているものより、「Relaxin’」のような、絵模様がいいし、顔の大写しではなく、「In Person」や「In Europe」の様に演奏中の姿が様になっている。

ジャズマンはポートレイトより演奏中の写真がやはり雰囲気に音が乗っていて良い。

迷っているところに、ドラマーの大野が遊びに来た。

「ゼンさん何やっているの?LPを散らかして」

「飾るところが少なくて、絞るのに悪戦苦闘しているの」と応えた。

「こうなったら、月替わりでゆくしかないな、序々に好きなものを独断で飾ろう、それに決めた!」

ゼンさんは自分に言い聞かせた。

色合いや雰囲気から、同じような傾向や構図を避けてと・・・。

「大野ちゃんどれがいい?」ゼンさんは大野に聞いた。

「そうね、Mobleyはいいね、写真から音が出てくるジャケットってこういうのだよね」

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「Timmnonsもいいけど暗いのが重なるからこれは次回だな」

大野が「Out To Lunch」を取り上げて見入っている。

「これが出た時は驚いたね、Dolphyってやはり凄いアーティストだなと、個性がきつ過ぎて寄り付きにくい面もあるけど、バスクラとボビー・ハッチャーソンのヴァイブの音のコントラストは見事としか言いようが無いね」

「トニーのドラムも若々しいし」

ゼンさんが踏ん切りをつけるような声で「決めた!」

「1、2、5、7、10、で始めよう。5枚しか飾れないんだからしょうが無い」

「ところで、大野さん用事は?」気が付いたように大野の顔をみた。

「ウン、懸案のハウストリオのベースの候補が二人いるので明日オーディションを店でやろうと思って」

「いいのいた?」

「一人は若い、まだプロ活動は3年で何かを持っていそう、もう一人はバークレイ帰りの32歳、これは出来上がっているから、好き嫌いがあると思う、ゼンさん聴いてみて」

「楽しみだね、その二人とも未だ聴いたことがないから」

「ところでゼンさん、ジャケットのキャノンボールは?」

「うん、これには思い入れがあるんだ、1963年7月に初めてキャノンボールが来た、それを見にいった翌日このLPを買った、その光景が浮んでくるだ」

そう、17歳の7月、高校生、ジャズカルテットを組んだ4人が産経ホールへ行ったんだ、例によって、お風呂場の流しの椅子をボストンバッグに入れてね・・・・・。

(ゼンさんの1963年7月、キャノンボール・アダレイ・シックステットの回想)

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そうね、あれは高校二年の夏の話だよね、キャノンボール6、初来日という記事がSJ誌に出て、我々4人組は居ても立ってもいられなかった。

当時の数少ないレパートーリーの中でも「ワークソング」は人気曲でね、校内で演奏会を開催すると、当時の高校生が知っている数少ない曲だったからね。

なんたって、尾藤イサオだって歌っていたし、TVのヒットパレードにまで出てきたしね。

その来日時に録画してあったんだね、ここにあるVTRがその時のものだ、ライブではないけどTBSのスタジオだけど、あの6人が「ワークソング」や「ジャイブサンバ」を演っていて、動く映像というのが凄い。

サンケイホールには例によって、お風呂場の流し椅子をボストンバッグにいれて、立見席券で一番前の通路に座るという作戦でいった。

開演の1時間も前に4人はついた、そして楽屋口へと向かった。

出入りする関係者風の人をつかまえて聞いた、「キャノンボールはまだ?」

高校生4人を見て、「もうとっくに入ってリハやっているよ」。

リハというのがやたら専門用語に聞こえた。

軒口君は言った「リハ、聴きたいな、入れてもらえませんか?」持ち前のずうずうしさで聞いた。

「ダメだ」一言で断られたというより、追い返された。

40分前になって、正面玄関が開いた、でも会場内は打ち合わせが伸びている為に入らないでくださいとアナウンスしている。

そのいう時に潜り込むのがこの4人組、横廊下の最前列に入るドアーを開け、舞台上手の下に入った。

緞帳は下りていたが、楽器のチューニングする音が聴こえる。

4人はワクワクしてきた。

キャノンボールが息を吹き込む、弟のナットと音を合わせている。

後ろで、スネアの調整をしている、ルイ・ヘイズだ、硬いけどよく抜ける音だ。

かなりリムを強く叩いている。スターンというリムショット独特の音が聴こえる。

幕の裏には皆が居るんだ、まだ写真でしか見たことの無い6人がいる。

小林が生意気な口で「今度参加した、ジョー・ザビナルって白人だろう、でもフレーズはなんか白人ぽく無いんだよなあ」

僕は小林に聞いた「もう、ザビナルのピアノ聴いたの?」

「ウン、聴いた、有楽町のママで」

そんな時、幕の後ろでピアノの音がした、別にピアノは音を合わせる訳ではないが、キートーンを出している、ユーゼフ・ラティーフがチョット音を出してマウスピースを直し、サム・ジョーンズが、G線をいじっている。

幕の後ろに想像を巡らし、舞台上の足音にわくわくした。

スピーカーから「どうぞ場内にお入りください」とアナウンスが流れた、これを合図に幕の裏からは、一切の音が出なくなった。

1ベルが鳴り、2ベルが鳴って場内が暗くなった。

我々4人は照明が落ちるのを合図に最前列の通路にボストンバッグを置き、座り込んだ。

(きっと今ならつまみ出されること請け合い、でも当時は良い時代でした)

オープニングは!

キャンンボールのカウントを出すフィンガースナップが聞こえる、アップテンポで「UNIT7」が始った。

音量が凄い、3管編成と言ってもジャズ・メッセンジャースの3管とは違う、やはりアルトとテナー、コルネットとなるとリードが勝つ。

従って、リードセクションがうねっているようだ。

キャノンボールが最初にソロをとる、大きなお腹から一気にチューブを搾り出す様な音だ、アルト一本でも音の大きさに圧倒される。

例によって、彼らがよくやる常套手段、バックリフをラティーフとナットがつける、これがまたカッコイイ。

バックリフにのって、キャノンボールが一層、フレーズを切らずに長い早いフレーズを一気に駆け抜けてゆく。

でも、小気味よく聴こえるのは、微妙で且つメリハリの効いたタンギングだ。

続いて、ナットがソロを取る、なんか、兄貴のお腹から空気を抜いた風船みたいな兄弟で相似形だ。

キャノンボールがラティーフとバックリフをつける、この二人のバックリフは強烈だ、フルバンドのリードセクションがリフをつけているのと同じ様な迫力だ。

このバックリフでソロ奏者を乗せるのは聴いていて気持ちがいいし、ソロがいい上に、相乗効果満点である。

ザビナルのピアノソロでも三人でバックリフを弱めにつける、ザビナルはこのファンキーなバックリフを利用して、バックリフにソロを絡めてゆく。

ルイ・ヘイズのドラムはまた凄い、あのリハの時調整していた、リムショットを多用している。

レガートがはっきりしていて、そして強弱がいい、落とすところは落とす、盛り上がるところは目一杯タタキ、コーラスの頭をリムでバッシと決める、この気持ちよさ。

「ジャイブサンバ」が始った。

ザビナルとサム・ジョーンズがB♭とFを繰り返すイントロを弾き始めると場内から拍手が起こった。

テーマのハモは綺麗だ、テーマのブレイクのところのメロディでナットのハイノートが光る。

キャノンボールは大きなお腹の上に小さなアルトを載せて、縦横無尽に吹きまくる、音をひねりつぶしている。

でも、大きな身体に似合わず、繊細なピアニッシモを出す。

強弱とタンギング、そして何時までも続くフレーズ、これでスイングしつづける。

今回珍しい出演者がラティーフとザビナルで未知数だ。

ラティーフはオーボエも吹く、自作の「プラネットアース」ではオーボエを吹くだけでなく、吸う音を効果音に使い神秘性を表現していた。ザビナルはやはり自作「スコッチ&ヲーター」でファンキー節を披露しスイングした。

白人なのに、やることは黒い。不思議な叔父さんに見えた。

アンコールが「ワークソング」だ。

7月の初め、帰り道は一層暑かった。

4人は帰り道で決めた、今度の文化祭のステージはオープニングテーマ、「ジャイブサンバ」にしよう!

「最初に幕を閉めたままで、イントロからテーマに入って、途中から幕を開ける、これでゆこう!」と言ったのは軒口君だ。

<次回に続く>

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