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2010年7月20日 (火)

エピソード21: 「いよいよゼンさんのJAZZコンセプトを3管編成という構成で演る日がきた」

<前回より続く>

店の前にはいつもと違って洒落た看板が出た。「ONE NIGHT STAND、 We Present Special SextetーーーTonight Real Funky comes back」

6時に店を開け、7時開演ということにした。

控え室が無いので、ゼンさんの自宅スペースを控え室に提供した。メンバーは5時頃には集まり、打合せや確認をしながら、軽い食事を取っていた。

店が開く前に、既に数人の常連が立っていた。ウエイターのヤマちゃんに「早く開けてよ」と迫っている。

「今日は予約もなし、入替えも無しの2ステージ、早い者勝ちだからね」と常連の船橋君が息巻いている。

開店して30分もたつともうほぼ満員の状態になった。近くに住む大企業の社長富田さん、若いカップル常連の吉川君とフィアンセ、ゼンさんの高校時代の仲間でドラムをやっていた小林君、高校時代はマックス・ローチをコピーして得意がっていた。サキコロのブルーセブンの長いローチのソロを真似して、右手でレガートを保ちつつ左手だけでソロをする、決して右手が崩れない、「どうだ、凄いだろう」といつも教室で机を叩いていた。今では海外TVの翻訳や有名ドラマの脚本を書いている。

大学時代に組んだアルトの遠田君も来ている。彼はいまや警察官僚でかなり偉いらしいが、そんなことを少しも感じさせない。かつては、譜面は初見でOK,アルトもギターも完璧で、神様みたいな存在の彼がなぜか警察官僚である。でもJAZZをやる時、聴くときは別、いつもニコニコしている。

みんな待ちにまったお客さんだ。

「あの、今日は予約を受けないというんで、直接来たのですけど」と、初めての若いお客さんが来た。

ヤマちゃんが「どうぞ、そこの船橋さんのところ、ひとり入れてあげて」

「いいよ、どうぞ、はいここにね」「あぁ、良かった失礼します」とジャズ好きはみんな一緒精神である。

お店、演奏者、お客、この三者が一体にならなければ、いい演奏はできないがゼンさんの口癖だ。みんなそれをよく聞かされているので、染み込んでいるのだろう。またそういうお客さんしかこ店には来ないし、来ると皆そうなってしまう。

スタッフもそろい、お客も手に飲み物をもちながら、今や遅しとまっている。

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メンバーが入ってきた。

ピアノの赤木君、ベースの山田君、そしてリーダーのドラム大野、アルトの大岡君、ペットの岡野君、そして今回の音楽的まとめ役テナーの山口君が順に、正に人を掻き分けながら入ってきた。

全員が位置についた、自然と場内は静まりかえった。

山口君が目でドラムの大野に合図をおくり、カウントをだした。かなり早いテンポだ。

ドラムのロールが4拍そして頭にシンバルをクラッシュしてレガートに入った。

同時にオープニングテーマ「ムーンリバー」が始まった。3拍子の優雅な曲を4拍子のファンキーでモーダルなアレンジにしている。

正にジャズメッセンジャーズの「ブハイナズ・ディライト」のムーンリバーその物が目の前にきた。

ゼンさんはカウンター横からまるで舞台の袖から見る光景を見ていた。

「このシーンそのものがファンキーな絵柄だ」

「カッコいいわね」とヨーコちゃんが横から呟いた、「ゼンさんのやりたかったの、これでしょう」と。

フロントに三管が並びファンキー&モーダルな「ムーンリバー」を奏でている。

お客さんの目と耳がもう釘付けだ、音量、ハモ、スピード感、そしてミュージシャンの演じる格好が・・・全てがジャズになっている。

オープニングテーマだからソロは取らない、アレンジされたテーマ、32小節で終わる。

エンディングに入り岡野君のペットがハイノートをヒットし、ドラムが盛り上げてテーマが終わった。

間を空けずに直ぐに次の曲に入った、「ラブ・フォーセール」だ。

やはりアップテンポでバウンスするアレンジになっている。みんなの身体が揺れている。

「良い音楽は自然に身体が動く」、これはディジー・ガレスピーの名言だ。

テーマの最後でブレイクして、最初に大岡君のアルトがソロをとる、低音部から一気に高音へとスラーで舞い上がる。思わず観客からウヲーという歓声が上がる。

2コーラス目の後半から16小節、テナーとペットでバックリフがつく、これで益々アルトがのりだす。

聴衆ものりだす。

コーラスの終わりで再度ブレイクすると今度はぺットの岡野君が高音から入る、これはリハでは無かったシーンだ。聴衆の興奮度がまた上がり始める。

ひとりテナーの山口君が冷静に全体を見ている。

同じ構成でバックリフがつくとソロがまた盛り上がる。

ブレイクして今度のソロはいよいよテナーの山口君の番だ、でも彼は静かに音数少なくソロに入り始めた。

これが反って皆の期待度を高めた、押さえた入り方だ。

「Ok,Steady!」と声が掛かった、富田さんだ。

彼のソロはコーラスを重ねる毎に盛り上がりが強まってくる。

結局皆な山口君に乗せられて盛り上がる、お客さんは陶酔の手前だ。

ピアノの赤木君は一番若いし経験も浅い、でも周囲の雰囲気が彼を後押しし、緊張することなく反って何時に無く新鮮なノリで弾いている。ピアノのバックでも三管のバックリフがピアニッシモではいる、普段このようなリフがついてのソロはない、でも今回は気持ち良さそうにメロを絡ませている。

そして、ドラムとのフォー・バース・チェインジにはいり、終盤のクライマックスになった。

そして、再度テーマに戻ったところで、会場から大きな拍手がおきた。

みんな、こういうジャズを聴きたかったんだ。

ゼンさんは心の中で呟いた。

「いよいよ今夜だけの特別セッション」

~佳境に入ってきた、オープニングが終わり最初の曲が終わった~

みんなの気持ちはもう釘付け状態でステージに集中している。

次からは三管がひとりづつフューチャーされてゆく。

最初はペットの岡野君が自分の好きな曲を選んだ、バラードだ、無伴奏から入る、テンポも未だだしていない。

約1分ばかりジックリとイントロをつくった、そしてテーマのメロに入った、「THE MAN I LOVE」だ。粋な入り方だ。思わず聞きなれたテーマに誘い込まれてゆく。テーマのメロの後半からアルトとテナーでハモだけをつける。

まるでトランペットが語りかけている。

場内は静まりかえっている。3コーラス目でかなりの高音域までもってゆき、一気にテーマを低音域でブラスの音を割ながら奏でている。いい雰囲気だ、甘過ぎもせず・・・。

最後にエンディングはまた無伴奏で、カデンツァ風だ。そして纏めは静かにフェードアウトさせた。

みごとだ。拍手は徐々に大きくなる、みんなの耳に音が残っているから、終わると直ぐに拍手ではない、各自の余韻が消えてから拍手がくる、音が心に入っている証拠だ。

テナーの山口君が初めて声をだした、「トランペット、岡野 ひろし!」また大きな拍手がきた。

続いてはアルトの大岡サトル君をフューチャーして、「LOVER!」と山口君が言うなり大岡君がカウントを出した。

アップテンポだ、例の半音階下降進行のテーマが快調に展開してゆく、バックでテナーとペットが下降進行をつけてゆく。気持ちがいい。

大岡君がまるでチューブから歯磨きを絞り出すように音を絞りだしてゆく。

ソロに入ってもソロフレーズが長く、スイングが途切れない。聴衆の一呼吸の長さより長いフレーズは聴く者をエキサイトさせる。

管がバックをつけないときは、べースの山田君が下降進行コードを明確に弾く、これがまた呼吸があっていて聴く人を魅了する隠し味だ。

ドラムが加えて4拍に1回リムショットを入れるともう佳境だ。

みんなの肩がゆれて止まらない。

エンディングへは4バースを経て入った。

曲が終わったときにはお店全体がスイングしていたようだ。

次は紹介なしで始まった。

テナーの山口君が出番であることをもうみんなは分かっていた。

「今日は彼は何故かモブレーに聴こえるね」と、ゼンさんがつぶやいた。

「そうね、渋い存在でも光る存在ね」ヨーコちゃんが小声で応じた。

曲は「COME RAIN OR COME SHINE」だ。

出だしからテーマのメロで決めた。説得力のある語り口だ。

ピアノの赤木君の絡み方がいい、まるで会話をしているインタープレイだ、加えてベースが絡む。

3コーラスはこの絡みで淡々と進んでいった、そして4コーラス目から倍テンポになった。

急に今度はスイング感がみなぎった。

場が明るくなった。そしてピアノにソロを渡した。

赤木君が2コーラスソロをとる、そして、ピアノとテナーで8バースチェインジときた。珍しい展開だ。

そしてまた、テンポを半分に戻して、テーマに戻った。

見事な展開を飽きさせずに聴かせた、山口君の音楽力は素晴らしかった。

次は前半の最後の曲だ、ドラムの大野が叫んだ「UNA MAS!」

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お馴染みのテーマが8ビートにのって始まった。

三管での「UNA MAS」は迫力があるし、今日初めての8ビートだ。

お客も乗りやすい。

全員で2コーラスづつソロをとった。

特に岡野君のペットは正にドーハム節そのものだ。グルービーな中音域でファンキーフレーズを連発している。

大岡君のアルトはまるで、キャノンボールが「UNA MAS」を吹いているようだ。

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力強さだけでは無い音も大きいけど、フレーズがキャノンボールだ。

原曲より少し早めのテンポでライブだとよく乗れる曲だ。

ゼンさんは場内を見回した、皆の顔が輝いている、目が生き生きとしている。

最後にテーマに戻ると一斉に拍手がおきた。

ゼンさんは嬉しくなった。

後半は凄いことになりそうだ・・・・。

<次回に続く>

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