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2010年7月 9日 (金)

エピソード18:「ジェリー・マリガンの思い出」の巻

<前回より続く>

ゼンさんはうたた寝をしながら、考えていた。ジャズをやろう、そうジャズらしいジャズをと。

今、巷のジャズ・クラブではピアノトリオに歌をいれて、いずれも同じパターンで、もう聴く方も飽きが来ている。

ここで、採算を度外視して、2管、3管でやろうと。

そこで、ゼンざんは考えた。もし1週間、日替わりで、最高のコンボを出演させるとしたら、どの様な組み合わせにするか?これは考えるだけでも楽しい作業だな。

1日目(月曜):H.シルバー5(ブローイング・ブルース・アウエイで幕開け)

2日目(火曜):W.ケリー トリオ+W.モンゴメリー

3日目(水曜):K.ドーハム4(ロータス・ブロッサム構成で)

4日目(木曜):J.マリガン コンサート ジャズバンド

5日目(金曜):C.アダレイ5(ティモンズ+S.ジョーンズ+L.ヘイズ)

6日目(土曜):A.ペッパー4(フリードマン+L.ビネガー+M.ルイス)

7日目(日曜):A.ブレイキー&JM(ショター+ハーバート+フラー)

8日目(月曜):S.モンク(C.ラウズ+B.ウオーレン+F.ダンロップ)

9日目(火曜):H.モブレイ+L.モーガン5(H.メイバーン トリオ)

10日目(水曜):D.バード5(P.アダムス・・・・)

11日目(木曜):O.ピーターソン トリオ+S.スティット+M.ジャクソン

12日目(金曜):ジャズテット(ゴルソン+フラー)

13日目(土曜):B.エバンス トリオ+ゲスト J.ホール

14日目(日曜):M.デイビス5(キャノンボール、J.コルトレーン+R.ガーランド+P.チェンバース+PJ.ジョーズ)

ウーン、かなり無理をして押し込んでも2週間かかるなぁ~。

まだ入れたいグループもあるし・・・困ったものだけどしょうが無い。

ゼンさんはこんなバンドを毎晩日替わりで、小さなクラブに出演させたら最高だな、夢のジャズ・クラブだ!

そうだ、内容はこれをイメージして、これからの出演日程をつくろう。

大野トリオを基本に据えて、管の構成を加えて、演目も考えよう。

こんな思いにふけっていたら大野がやって来た。

「ゼンさん、おはよう!」

もう夕方の5時だ。今夜の準備に取り掛かる前にゼンさんは大野にこの妄想の話をした。

大野は大笑いで、ギャラを考えると凄いねと言った。

「でも、3億円の宝くじに当たって、これに費やすって言う幻想はどう?」

「死んだ人は生き返らないけど、考えるだけなら何でもありで面白いね」大野が反応した。

「本当に今度の企画はこのイメージでゆきたいんだけど」ゼンさんは真面目な顔をして応えた。

「ギャラの心配はするな、リハの分の手当ても考えるから」ゼンさんは加えた。

大野が、もう分かっているよという顔で、出演者を語り出した。

ペットは岡野君、テナーが山野君、アルトが森友君、ボントロが林君、この組み合わせで2管にしたり、3管にしたり編成を変える。ゲストで、ギターの川野上君とヴァイブの伊藤君を用意しておこう。

みんな、ハードバップが好きで、モードの洗礼も受けている。

そう、丁度、50年代から60年代にジャズが好きになり、70年代から活動を始めたミュージシャンが中心になっている。「みんな、やりたいんだ、こういう企画が、でもジャズ界では採算が取れないので誰も企画しない。この話したら皆歓ぶだろうな」大野が自分に言う様に話した。

「纏まりのある企画にする為に3日間にしよう。1日が凝縮した構成で演奏できるようにね」ゼンさんが言った。

「編成と曲目を考えるのって楽しいな」といつの間にかピアノの赤木君が加わった。

「そうだ、編曲とか譜面の準備あるから頼むよ」と大野が赤木君に言った。

ゼンさんが、大野と赤木に言った「明日までに、大体の曲目を選んでみてよ」

今度は選曲だ。これも楽しい仕事だ。

この日の幕開けは、「ショウほど素敵な商売はない」のアップテンポだ。

大野トリオのノリがいい、ゼンさんの気持ちもウキウキしてきた。

ゼンさんは大事な事を忘れているのに気がついた。そう、ロリンズを忘れていたのだ、なんて言うことだと自分で自分に言い聞かせた。

でもロリンズだとすると、どのような編成(パーソネル)が良いか・・・と暫し考えた。

自分の経験からすると、初めて直に聴いたロリンズの印象が強い、そうモヒカン刈りのだ。

Jazzpicrollins

でも、エルビンとのピアノレスのBN盤編成でソフトリーを演るのもいいし・・・。

ポール・ブレイ、ヘンリー・グライムズ、ロイ・マッカーディーというリズムセクションにすると、初来日編成だ。

当時、ラッシド・アリなるTPが一緒に来たが、中途で追い返された。

自分自身の趣味だけで言えば、「サウンド オブ ソニー」の編成(ソニー・クラーク等)でスタンダードを吹いてもらいたいなと・・・何といっても、「EVERYTIME WE SAY GOODBYE」(さよならを言うたびに)を聴く度に胸キューンもので、いずれ、このタイトルで物語を書きたいと思っている。

それに「雨の朝、パリに死す」(LAST TIME I SAW PARIS)だって良い。サガンの世界をテナーで語りきっている。

この二曲だけでも目の前でロリンスが吹いてくれたら最高だ。

ロリンズがあの太い音で、とつとつと、一言づつ説得力あるフレーズで話し掛けてきたら、自分では自分なりのシーンを限りなく想像することができる。

「これでゆこう!」ゼンさんは、誰に言うことなく、心内で納得した。

「でも、マリガンの予約が最初にくるとはね」とヤマちゃんがヨーコに言った。

ゼンさんが「でも、あれは聴きものだ、あのメンバーが目の前にいて、音を出したらと想像するだけで、鳥肌が立つよ」

「何しろ、サド・メル・バンドになる前にサド・メルが参加して、リードセクション、ブラスセクションキラ星が揃って、うねる様なリードセクション、切れの良いブラスセクション、そしてパンチの効いたメル・ルイスのドラム。

これが後ろでスイングし、マリガンがステージの中央で、長身にロングヘアーをなびかせ、バリトンを自在にあやつりブローする。先ず幕開きが、『ブルーポート』、続いて『ブラック ナイトガウン』、そして『チャタレイ夫人の恋人』ときたら、もう落ち着いていられないね」ゼンさんは一気にまくし立てた。

200800324bn_051

<ジェリー・マリガン コンサート・ジャズバンド at ヴィレッジゲート>を今でも聴くと、座って聴いていられない。

スピーカーの前に立ち、後ろにサド・メルオーケストラを従え、自分はマリガンに成りきり、マリガンと一緒にバリトンを吹く、もう完全に成りきり状態です。そのくらい小気味良く且つダイナミックにスイングするのです。

それがもし、自分のジャズクラブにライブ出演して演奏してくれるなんて、想像しただけでたまらないですね。

1984年だと思います、斑尾ジャズフェスにマリガンがフルバン構成で来たのは。

この時、まじかに聴きました、見ました。

バックの構成はこの時は若いミュージシャンが主でした、でも中央に仁王立ちになってバリトンをブローするマリガンは最高でした。

「モンク ミーツ マリガン」という有名なアルバムがあります。これが出来た経緯って知っていますか?

何故あまり、共演の縁がなさそうな二人が共演するに至ったか?

モンクは人一倍シャイなのは有名ですね。パリでモンク・トリオの公演をしている時にモンクは急に自信を無くし、開幕直前にやりたく無いと言い出しました。人前に立ちたくなくなったのです。

同時にパリに来ていたマリガンが、舞台袖に来ていました。そう、仲間の公演を覗きに来たというよくあるケースです。マリガンがいいました、「俺なんか始終そうだ、自信なんて無い、でも自分を素直に出して思いっきり演奏すればお客さんは納得してくれる大丈夫さ」と勇気づけました。

モンクは言いました「じゃあ、一緒にやってくれ」

「いいよ」マリガンは快く引き受けました。マリガンの優しさです。

これが、共演の経緯です。音楽性が合うの合わないの等というのはジャズに通じません、意気が合えば誰とでも一緒にやれる、ジャズだからこそのエピソードです。爾来、二人は仲良しになったとさ。

Jazz4_033

なああんて考えていたら、ドラムの大野が、「ゼンさん、今度やるスペシャル・バンドの曲目を決めたいので案を考えておいてね」という。

ゼンさん、ますます楽しくなってきた、ジャズをやろう!!!

<次回に続く>

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