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2010年7月 2日 (金)

エピソード16:「千客万来の巻」

<前回より続く>

以前「マネージャングル」のミンガスが萎縮していると言うご意見があった。

やはり遠慮があったのでしょうね。さすがのミンガスも。再発のCD盤で取り直しテイクを聴きますと、ミンガスがイントロを弾きだすと、4小節でエリントンがとめます、そしてテンポとノリを変えさせるんです。

イントロのフレーズ自体は変わらないのですが、雰囲気は全く変わります。やおらエリントンがテーマを弾きだすという場面があり、やはりエリントン主導で録音が進んでいることを実感できるんです。

この様な背景を知って聴くと別の考えが出てくるのですが、でもこれは私は好きではないのです。

アルバムは作品として完成させるべく、皆で努力をしている訳ですからね。

ゼンさんと富田さんは演奏の休憩時間に前回の「マネージャングル」の話題を話していた。

そこへ、関さんが階段を降りてきた。「病み上がりなのに大丈夫ですか?」とゼンさんは話し掛けた。もうすっかり良い様で顔色は良かった。「丁度いい、こちらに富田さんもお見えなんですよ」と片隅のテーブルに案内した。ジャズ好き同士は打ち解けるのも早い。でも仲良くなりすぎると終始言い合いという事もあるが・・・。

吉川さんからは、「最近の評論家で誰か推薦できる人は?」という難題を頂いているんですよ、とゼンさんは話し始めた。ゼンさんは話が弾むように、昔話を始めた。

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「以前はキラ星のごとくでしたね。私は故野口久光先生だけは「先生」と呼ぶことにしています。JJこと植草甚一氏もいいですね、文章の味が、憧れの文体をかかれます。「JAZZ大全」~私の好きなミュージシャン~などは教科書ですね。」

話は切れない、「油井正一氏は語り口がいいですね、ブルーノートの非売品で油井氏が語りながら紹介するJAZZの歴史50年代、60年代がありますが、編集といい語りといい見事ですね」

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「私が若かった頃、高校生の頃です、授業中にSJ誌を読んでいました、丸暗記するほど何回もね。ある時大橋巨泉という新人が登場しました。あの顔で馬鹿げたことばかり言うので高校生にも馬鹿にされていました。また変なことを言っているぞ!ってなもんです。相倉久人氏は硬派の理論家でアバギャン分野では秀逸でした。」

ゼンさんの話が途切れない「そんな中、巨泉氏ですら??いい仕事をしています。カーメン・マックレイ大好きの氏は歌物の評で「ALONE TOGETHER」を「二人ボッチ」と訳したのです。この邦訳は歌の内容とあいまって素晴らしいと思っています。」

「学校の帰り、幸い近くにあったアメリカ文化センターへ立ち寄ると、野口久光先生がいらっしゃって、遠慮の無い若者の質問に丁寧に応えてくれました。その時の体験が今でも活きているんだと思います。幸せなことですね。先生はジャズだけでなく、芝居や映画にも興味を持ちなさい、こんな良い本があるよ、と紹介してくれました。

ほとんど英文の原書でしたが、高校生の英語では太刀打ちできない内容でしたが、学校の英語の先生では分からない文章を聞きに行くと丁寧に英文表現の原点を教えてくれました。おかげで英語は上達しましたね」

ゼンさんは続けた「でも今はチョットがっかりしています」

テーブルの周りには、二人のお客さん以外にも、休憩中のミュージシャンまで集まってきた。

「数年前、友人のミュージシャンがLPを出す事になり、無事録音もすみ、私は勝手に『もう一つのライナーノーツ』と言う文章を書き、友人に贈る言葉として渡しました。

その文章がレコード会社の方から本番のライナーノーツを書くプロの評論家に参考資料として出されました。

そこまではOKです。LPが出来上がりびっくりです。ジャケットの中の解説を読みました、最初の数行に”今回参考資料を貰ったが一人のファンが書いたものであるが、良くできていたので参考にさせてもらった・・・・”とあり、以後一言一句違わない文章が丸写しだったんです」

「ヘーッ!」若いピアノの赤木君が驚いた。「それって著作権侵害じゃないですか!」

「でもせっかくの新譜にケチを付けたくなかったから、ダンマリをきめて、以来その評論家はもとよりその種の方達のことはあまり信用しないことにしている。現在信用できるのは、瀬川昌久氏と岩浪洋三氏くらいかな」

後ろから常連の富田さんが話しに加わってきた。

「海外評論の方がいいな、内容もある取材もシッカリしている、だから評論が本質と核心をついている」

「そう、ダウンビートやフランスのHOT JAZZなどいいね」富田さんが続けた。

若い常連客の船橋君が「最近は専門家より村上春樹氏の文章と和田誠氏の絵というコンビもいいです、評論とは違うけど、でも何度でも読みたくなる」

「その何度でも読みたくなるって大事な要素だね」ゼンさんが加えた。

「ベーシストのビル・クロウの本も良かったね、タイトルは何だっけ?」ドラムの大野が言った。

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「さよなら、バードランド」さすがベースの山田君が咄嗟に答えた。

「あれはいい本だ、50年代、60年代の頃の情景がミュージシャンの観点から書かれている、当時の表裏が見えて興味深いね」富田さんが言った。

「本と同じジャケットのCDもいいわ」ヨーコがカウンターの方から聞いていたのだろう、加わった。ゼンさん曰く「僕なんか、ブルーノートのジャケットカタログ本を眺めながらJAZZを聴いているのが至福の時だね」

「さあ、次のステージゆくぞ」リーダーの大野が声をかけた。

「最初は、Stranger in the nightだ、キーはA♭で」赤木君が山田君に伝えた。

今夜の演奏は盛り上がりそうだ、新しいお客さんも二人加わった。それも只のお客さんではない。

みんな狂がつくジャズキチだ。

<・・・コメントに来ていただいた方々を勝手にお客様として登場して頂くことがあります。店内で暴れない限りつまみ出したりしません。店主敬白>

<次回に続く>

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コメント

ゼンさん、こんにちは。

最近出版された本にマイケル・シーゲル著の「サキソフォン物語」があります。サックスという花形楽器をジャンルを越えて論じた稀にみる研究書です。翻訳はジャズに造詣が深い諸岡敏行氏です。副題の「悪魔の角笛からジャズの花形へ 」に強く惹かれました。

ブログを再開しましたのでよろしくお願いします。

Dukeさん

コメントありがとうございます。
この本の事は気になっていましたが、まだ買ってません、早々に手配し、読むことにします。

ところでブログ再開とのこと、おめでとうございます。
ではボチボチ遊びにゆくことにしますか、そしてまたリンクでも張り合いましょう。

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