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2010年8月18日 (水)

エピソード32:ゼンさんの知ったかぶりジャズ講座「マイルスと枯葉」

  <前回より続く>

日本たばこ産業がジャズファンからつのった、ジャズのリクエスト・ベスト500曲の

1位は何でしょう?

その答えは、「SOMETHING ELES」マイルスの「枯葉」でした。

このアルバムは超有名盤でマイルスとキャノンボール、ハンク・ジョーンズ、サム・ジョーンズ、アート・ブレイキーというパーソネルで、本来はマイルスがリーダーとなるところ、レコード会社との契約の関係でキャンノボール・アダレイがリーダーでクレジットされている。

普通、マイルスの「枯葉」というとこれを指す。

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「枯葉」は本来シャンソンで、映画「夜の凱旋門」の挿入曲で有名になった。

これをジャズに取り上げたのがマイルスである。英語名「AUTUM LEAVES」となり英語の歌詞もつき、ジャズのスタンダードとなってしまった。

爾来、これを演奏するアーティストは引けを切らない人気曲であるし、また初心者がアドリブの練習にもよく使う。きっとコード進行が分かりやすいからだろう。

マイルスは色々なジャズのジャンル外の曲を取り上げる。

マイルスの手にかかると何でもジャズになってしまうが、一つ彼のやり方がある。

「SOMETHING ELES」で初録音をし、次々と録音をするが、テンポが段々早くなってゆく事にお気づきだろうか。マイルスは曲を取り上げると、序々にテンポを上げてゆき、最後にはその曲を棄ててしまう。

1964年夏に東京にマイルスが初登場した。

僕は、マイルスと同時に、ウイントンケリー+ポール・チェンバース+ジミー・コブのオール・アメリカン・リズムセクションを直に聴けるのを楽しみにしていた。(当時17歳であった)

第一回世界ジャズ・フェスティバルはかなり前もってアナウンスされた。そのアナウンスの後でマイルスがリズムセクションを全面的に交替したことを知った。

ハービー・ハンコック+ローン・カーター+トニー・ウイリアムス(17歳)である。

今でこそ、夢のリズムセクションであるが当時は新人3人で特に、トニーは未だ17歳のドラマーであった。

この録音を聴くには、1964年の5月頃に発売された「SEVEN STEPS TO HEAVEN」を聴くしかなかった。

ウイントン・ケリーたちは別にピアノ・トリオとしてフェスティバルに参加した。

レコードで初めて聴くトニーはメロディアスな太鼓を叩くなという感想くらいで、凄さを感じることは出来なかった。

1964年7月、新宿厚生年金ホールでマイスルが日本で初めて音をだした。

僕は舞台下手、前から3列目の左から5番目の席にいた。

最初の曲が「枯葉」であった。しかし、そのテンポはかなり速いものであったし、テーマもかなりデフォルメされて、テーマを聴かせるという間もなく、アドリブに入った。

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当日はテナーにサム・リバースが加わっている。

舞台の上でマイルスは自分のソロが終わると通常は袖に引っ込んでしまうのに、この時はトニーのドラムセットの前に立ち、客席に背をむけて、トニーを見つめて何にか指示をだしていた。

トニーはマイルスの目を見つめ、ものすごいスピードでたたき出すシンバルレガートと左手のアクセントに集中していた。レガートのニュアンスとバリエーションも沢山あって、マイルスが指示をすると即座に違うレガートへと変化させてゆく、この見事さに鳥肌がたった。

この後、「MILES IN EUROPE」が発売になった。フランスでのジャズフェスティバルの実況盤である。

ここでまた、驚いた、最初の曲は「枯葉」なのだが、テーマを吹かない、最初からアドリブでコード進行が「枯葉」というだけである。スピードも東京の時よりまだ早い驚異的なスピードだ。

でもこのリズムセクションは乱れる事無く凄い一体感、グルーブ感、スイング感を出している。

因みにこの時のテナーはジョージ・コールマンである。

このコールマンよりは東京に来たサム・リバースの方が出来が良いと思う。

マイルスは「IN PERSON」が発売されるまで、カーネギーホール以外の実況盤が無かった。それまでは全てスタジオ録音盤である。

マイルスはスタジオ録音でもリハーサルを嫌ったと言う、それはリハーサルにより即興性が損なわれると考えたからである。マイルスはスタジオでもジャズは即興であると、・・即興の面白さと緊張感、偶発性と相互インプロバイスを大事にした。

だから多くのテイクを取ることもしていないし、TAKE1とTAKE2を比べてみると、全く違う内容になっている。

昨年、「Kind of Blue」発表から50周年記念の資料が発表された。

その中には、録音当日のテイクの模様がスタジオ・シークエンスとして収められているが、マイルスはどのテイクでも、上手く行かないと思った瞬間に録音を中断している。

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そのほとんどがテーマからソロに入る前で止まっている。

つまりソロに入るまでに、これから何が起こるかというワクワクしたグルーヴ感が出ないとそこで止めてしまうのだ。これはスタジオでも即興感覚をいかに大事にしたかの現われだと考える。

「IN PERSON」は初の実況盤でサンフランシスコのクラブ「BLACK HAWK」で金曜と土曜の二日にわたり録音された。

初めての実況はどんな演奏をするのだろうかと、LPに針を下ろす時は少々の興奮を覚えた。

金曜のよる一曲目は「WALKIN」である。やはりオリジナル盤よりかなり早いテンポである。

スタジオでの研ぎ澄まされたあのマイルスの音より、荒々しい、フレーズにアタック感が感じられる。

鋭い一音とバックとのインプロビゼーションがスリリングである。

この時のリズムは、ウイントン・ケリー+ポール・チェンバース+ジミー・コブでテナーはハンク・モブレイ。

この4人の音に対する緊張感がたまらない、マイルスの存在でこれだけのテンションが張れるかと・・・。

僕はこのCD盤をかけて、これに合わせてピアノを弾いた、キーはFだった。

ケリーのフィルインのタイミングを知りたかった。

これをやってビックリした、マイルスのフレーズの間に「カーン」とコードを一つ入れるだけでも、狙いすましているのが分かる。100分の一拍を狙っていると言っても過言でない。

因みに僕のお気に入りのピアニストの一人、ウイントン・ケリーのベスト盤は実はこの「MILES IN PERSON」だと思っている。

ピアノソロに入ってからのスイング感が止まらない、ウエス・モンゴメリーと共演している時の「このスイング感はどこまでゆくの~」というのとは又違う。

タイムの間が引き締まってのスイング感覚だから、強烈である。

LPで発売されたときは時間の関係で曲目が削られたがCDになってよりコンプリートになった。

そこに「枯葉」も入っている。

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JAZZの基本は生に限る、そしてレコードもできれば実況盤が良い。

ミストーンがあっても、フレーズが詰まっても、ドラムが頭を間違えても・・・でもそんなことはかまわない、その様な完璧さはジャズには求めない、それよりプレイヤーが自分のソロの中でどれだけを言えたかが勝負であると思う。

そこへゆくと・・・・いいたくないが、昨今の日本のジャズプレイヤー、日本人が主導しているジャズレーベル、全て予定調和の中で満足しているようで、マイルスの緊張感の欠片もない。

ジャズをジャズらしくやって欲しいものである。

いやまた苦言になってしまった。

そして、「枯葉」と言えば、ウイントン・ケリー・トリオの「枯葉」も有名盤として存在するが、ここでケリーが演奏する「枯葉」とマイルスのバンドで演奏する内容は全く異なる。

どちらが好きかは皆様次第です。

「枯葉」と「マイルス」で一言と思ったらこんなに長くなってしまいました。

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<次回へと続く>

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コメント

ジャズを語るとはこういうことか。
読み応えがありました。
しばらく遠ざかっていたマイルスを聞き直します。
自分もここまで語れるようになるにはまだまだ時間がかかります。

下手な評論家は褒め倒す感があると思います。でも、そうしないと食べていけないのでしょうね。

今回の文章、ありがとうございました。

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