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2010年8月 6日 (金)

エピソード28: 「スウィングしなけりゃ意味がない」

<今回はちょっと話の方向性を変えて、村上春樹著「意味がなければスイングしない」という本のことで>

大分まえに、この本が発売され、表題を見て購入、当然エリントンの名曲タイトルからの逆説的な表題と・・・、

結論を先に言います、この本読んでください、何故我々が音楽が大好きで、どうしてこうまで50年以上も音楽を聴き続けてきたのか、またそれは何を意味するのか、実に分かりやすく書かれています。

著者はここで10人程の音楽家を取り上げ、一人づつ、自分の考えや評論を言いたいだけ書いています。

Murakami_haruki

普通この手の出版物には原稿量の制限から限りある字数で書かれるのでしょうが、ここでは「存分にお書きください」という依頼で著者は言いたいだけ言っています。

ある部分では同じ対象を方向を変えて何度も分析し、自分の感情も交え、実に非論理的に、でも分かりやすく述べています。

特に「音」とは何か?と言う・・・・楽譜をなぞらえて、技巧をもってして表現すれば音楽か?心打つ音楽かと、再三読者に問います。

特にウイントン・マルサリスの項では最高調に達します。マルサリスは退屈だ!

もう私は自分の代弁者ではないかと、代わりに書いてくれたのかと、どうして私の言いたいことがそんなに分かるのかと、言いたいくらいでした。

マルサリスは技術的には最高のテクを有し、そして論理的に組み上げる知性をも持っている。

一度聴くと、なるほどと分析し説明してくれる、それもとても見事に、でも何も響いてこないし、打たれるものも無い、二度目を聴きたいとは思わないと・・・・村上春樹は言っています。

私はマルサリスと喧嘩というか、言い合いをしたことがあります。

1983年頃でしょうか、マルサリスがまだメッセンジャーズの一員で来日した時です。

六本木のあるライブハウスで親友ブレイキーが紹介してくれました。

演奏を聴き進むうちに僕は彼のソロに大いなる疑問を持ちました。

バラードを吹いても感じないのです、何も浸み込んでこないのです。

原曲は素晴らしいテーマなのに、ソロに入っても、いまひとつラヴバラードが愛を語らないのです。

実につまらない演奏です。

アフターアワーズで楽屋代わりの舞台袖の席でメンバーが一服している時に、「私には君のバラードが何を言いたいのか分からない、君は恋愛をしたことがあるのか?失恋をしたことがあるのか?、寂しい、虚しい思いをしたことがあるのか?私はJAZZが聴きたい」とたたみかけました。

彼はかなり興奮した様相で「それが何の関係があるのか!おれの演奏が嫌いなのか?」ときました。

御大ブレイキーことパパは、ニヤとしながらウイントンの顔を見ていました。

未だ20歳そこそこのウイントンは、「俺のペットが理解できないのではないか、お前はJAZZを聴いたことがあるのか?」と言いました。

ブレイキー・パパが太くしゃがれた声で言いました「彼はお前が生まれる前から彼はJAZZを聴いているんだ」

これがオチです。マルサリスはかなり険悪な表情で、まだ何か言いたそうでしたが、ブレイキー・パパのウインクでその場は納まりました。

その回答がここに書かれています。

同じような話が、クラッシクのピアニスト、ルービンシュタインとゼルキンの比較のところにも出てきます。

ルービンシュタインのコンサートで暗譜していた曲を弾き出したが途中で忘れ、以降全部即興で弾いたシーンが出てきますが、これなどは、正に、究極のフリー・インプロビゼーションで、こっれてJAZZではと思わされる話が出てきます、そして譜面以上に感動し観客は喝采をしたと。

ウイントン・マルサリスの最終項に結論が出てきます。

ウイントン・マルサリスより、晩年のチェット・ベイカーの方がいい。

あの有名なベイカーの晩年の映画は麻薬でぼろぼろになった彼が必死で音を出すシーンがあるが、このたった一つの音の方が、マルサリスの饒舌な音よりどれだけ伝わり、響くか、この一音に涙する、これが音楽であり音なのだ、だから我々は何十年も同じジャズを聴き続けるのだと。その聴き続けるエネルギーを出させてくれるものが無い音楽は虚しい。

因みに私はマイルスの音はトランペットの音だとは思いません、あれはマイルスの音なのです、語りなのです。

トランペットという楽器を借りて出している、マイルスの声であり生き様なのです。

ルイ・マルの名作「死刑台のエレヴェーター」の中で、マイルスがバックで吹いています。

マルが映画を見せ、好きに吹いてくれといました。

マイルスは1テイクで映画の画面と展開を見ながら即興でつけた音です、実にスリリングなアドリブです、それがサンウンドトラックとなったのです。

この様なことがマルサリスにできるでしょうか?

マイルスがマルサリスのを聴いて何と言ったか・・・・・多分「SO WHAT!」(だからどうだって言うんだ!)

僕はたった4小節の一節を聴きたいために、そこにたどり着くまでの30コーラスを聴き、徐々に興奮し何度も同じCDやレコードを聴いてきた。100回以上聴いたCD・LPは数限りなくある。

そして涙し、悲しみ、時に怒り、時にはしゃぎ、時にロマンティックになってきた。

JAZZとは人生であり、音の音源も人生であり、ITS A LIFE なら ITS A JAZZであり、それが音なのだ。

だから僕はこのブログの題名を「たかがJAZZ、されどJAZZ]とした。

<次回へ続く>

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コメント

はじめてコメントいたします。
楽しく拝読させていただいております。
自分のブログにもこの本のことを取り上げたのを思い出しました。
拙ブログをご参照下さい。
マルサリスの演奏については、同感であります。
はっきり本人に突きつけたのは、爽快ですね。ちょっと驚きましたけどcoldsweats02

gennさん

初めまして、駄文をお読み頂き恐縮です。
まだマルサリスも駆け出しの時で、天才と話題にはなっておりました。
しかし、ジャズ界で天才と言われても直ぐに只の人になる例は多々あります。
それに如何に天才でも、ジャズの場合はその日により出来、不出来の差も大きくありますから、私にジャズやれよ・・と言われたくらいでムキになっていたマルサリスは未だ青かったに違いありません。
しかし、未だにそのまま・・・というのも・・・(笑)

当ブログは妄想と空想と現実とが混同したいい加減な拙文でありますが、作者にとってコメントは演奏者にとっての拍手同様、元気百倍であります。
今後とも宜しくお願いいたします。

心に響くかどうか、それが問題だ。

酔った勢いで生意氣言ってすみません。
ですがジャズを聞くときはこの姿勢を最優先しています。

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