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2010年9月24日 (金)

エピソード46:「今夜はジャムセッションの巻」

ゼンさんは母屋から中庭横切って「KIND OF BLUE」へと移動した。暑さが一気に去って秋風が吹きだした。この中庭がいつも四季を感じさせてくれる。

すでにお店には10人程のお客さんが入っていた。

河田や大野は既に音だしの準備をしている。

「あれ、宮路君じゃない」とゼンさんが声をかけた、「久しぶりです」と宮路が応えた。

宮路春樹、ジャズ・ギターリスト、35歳、大野と同じ大学で、学生時代から結構な腕前で、在学中にプロにスカウトされ大学を中退した。今はNYに住み大物のグループと行動を共にしている、今や人気も実力も充分だ。

「今日は遊びで来ました」ともうアンプを整えて、ギターの調弦をしている。

常連さんが、「おう、今夜は凄いな、特別ゲストだ」と言う声が聞こえる。

7時過ぎに音が出た。

今日のオープニングの曲はコルトレーンの「Impression」だ。アップテンポで軽快な展開だ。

ベースとドラムのレガートがピタリと一致する、その上に、宮路のギターが軽やかにおなじみのテーマを載せてゆく。この曲は背後でシッカリと軽快にスイングするリズムに乗って、ユッタリと二分音符でリフ的なメロを載せてゆく、ここが気持ちの良いところだ。

宮路の中音域でホーンの様に弾くテーマがウエスを想像させる。

12小節終わると、ギターのコードワークで4小節刻み、転調し、再度テーマを弾く。

止まらないスイング感が既に始っている。

河田はギターに合わせるように、もうウイントン・ケリーのノリだ。

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音が出て、ブルース2コーラスで、既にお店がスイングしている。

皆が、今日は何か違うぞと感じている。

宮路は5コーラスをシングルトーンで盛り上げ、ついでキレの良いカッティングとオクターブ奏法でさらに盛り上げてゆく・・・そこに山田のベースと大野のレガートが完璧についてゆく・・・河田のピアノがフィルインし、宮路のフレーズに呼応し、まるで会話をしているようだ。

河田のソロに移った、河田はピアノになってもテンションを落とさず、そのままのノリでソロに入った。完全にケリーの感覚だ、小気味良い三連符が快適に転がる、フレーズが途切れない、このスイング感は何処まで続くのだろうか、河田のバックで宮路が鋭いフィルインをカッティング・コード弾きで入れる。

ゼンさんは、「これはまるで、HALF NOTEのウエスとケリーみたいだ」と。

この「Impression」は15分間続いた。

客席では、「これがジャズだよね」とDUKEさんやKAMIさんが話している。

みんな、仕事の疲れが飛んだようだ、良いジャズは疲労回復、やる気を出させてくれる最高の癒しだ。

宮路は次に「WILLOW WEEP FOR ME」を選んだ。

初めはミディアム・スローからだ。このブルージーな曲を一層泥臭くフェイクしたテーマを宮路が弾く、河田がブルーノートを強調したラインでバックアップする。

宮路はサビをピアノの河田に渡した、別に打ち合わせた訳ではない、咄嗟のアイコンタクトだ。

河田は思い切りモタレるノリでサビを弾く、このせつないサビのメロディに身を任せると吸い込まれそうだ。ベースの山田君が、微妙にメロディラインに絡ませてくる、もうインタープレイの感覚だ。

ソロに入り、宮路は倍テン(テンポを倍にする)にした。

倍テンになっても大野はブラッシュのままで叩いた、4ビートの刻みをベースに任せて、ブラッシュでオカズを多くし、フロントに絡む・・・・まるでエルビン・ジョーンズのブラッシュ・ワークを彷彿とさせる。

スネアを叩くブラッシュとギターやピアノがこれほどまでにインタープレイができるものか・・・正にその場でインスパイアーされた感覚がそのまま即興的にインプロビゼーション・フレーズとなって語り合い、絡み合う、音はツタの如く、アラベスクの様に上へと絡み合いながら伸びて行く、大きなキャンパスに描かれるアラベスクを見る様だ。

これが生のジャズの現場だ。

ジャズは生で聴くべし・・ゼンさんが嘗て、年間200日もライブハウスに通い続けた背景にはこれがあった。毎晩、同じグループを200日も聴いたら飽きるでしょうと言われた、こういう人はジャズが分かっていない。同じプレイヤーでも毎晩違う、良い日も悪い日もある。その一瞬の閃きを感じたとき、プレイヤーと聴衆が通じ合う瞬間であり快感である。

芸術が概念や様式ばかりを求めると予定調和の世界にはいる、頭脳的創造にたよる結果だ。

もうジャズという芸術は生理的創造に帰すべきと・・・横尾忠則氏の意見に完全にアグリーである。

「一枚の傑作を描くより、その画家が何者であるかということが重要だ」とピカソが言っている。

<前回より続く>

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