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2010年9月 6日 (月)

エピソード40:「ヴォーカル・オーディションの巻」

<前回より続く>

・・・いよいよ企画していたヴォーカル・オーディションの日・・・

ゼンさんは、ヴォーカル・オーディションの受付をしていた、ヨーコと山本を呼び、母屋の居間で状況を聞いていた。

応募総数、313通、内、書類で見当違いなもの50通、デモテープで素人以下が200人、と言うことで、ゼンさんは先ほどからテープやらMDやらを60本ばかり聴いている。でももういい加減にして欲しい状況だ・・・・「なんだこれは?」と「そうなんです、珍しく男性なんです、今回男性は20人程いたのですが、彼はちょっと面白いでしょ」ヤマちゃんが言った。「聴きやすい人ね」とヨーコが言った。

「この人は、年齢は」とゼンさんが聞いた。「えーと35歳ですね、もうシート(年)のチャンジー(業界逆さ読みで、ジーチャン)ですか」とヤマちゃんが・・・「いや、いいな、声質に落ち着きがあって、キラキラはないけど・・」とゼンさんが何かを思い出そうとしている。

「それで、最終は何人」ゼンさんが聞いた、ヨーコが「丁度10人です」「いいな、それで3人に絞れば」とゼンさんが纏めた。

(ここでちょっと話しのわき道に・・・業界さかさ言葉で飛んでもない誤解がかつてありました。あるライブで、歌手の方が歌っていました。その女性歌手は30歳で旦那さんはベーシストでした。客席で生半可なお客が業界用語で、「あのターウ、スーベのチャンカーだって」といいました。歌っていた歌手は間違って聞いてしまいました。「あのターウはスーブのチャンバー」と聞いてしまったのです。ステージの後でむくれていましたが、ピアノの人が、スーベのチャンカーと言ったじゃないのと言ってご機嫌が戻りましたとさ。耳の悪いボーカリストですね。)

そしてある週末の午後3時、に10人のノミネートされた人が「KIND OF BLUE」に集まった。

審査員も集まった、DUKEさん、25さん、KAMIさん、BASSCLEFさん、しんじさん、富田さん、西郷さん、ゼンさん、皆さん、遠路はるばる集まった。

候補者はクジでランダムに出場順序が決まった。

1番:クリス・コナーのそっくりさん、32歳女性(持ち歌:バードランドの子守唄)

ゼンさんの独り言:「クリスねー、歌に色気が欲しいな、敢えて言うなら技巧派でスタンケントン三人娘の中では技巧に走ったのでは・・・」

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2番:リーワイリーが好きだという、20代後半の女性(持ち歌:アン フォゲッタブル)

「リー・ワイリーか、別名、ヒワイ(卑猥)リーだよな・・まあ色気代表に言われるけど、高貴な色気ではないな、プロの水商売の色気と・・でも長年よく歌ったね、外見で評価されることが多いな・・・」

3番:ロレツ・アレキサンドリア風、38歳(持ち歌:マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ)

「歌唱力もいいし、表現も落ち着いていていいな・・知性と豊かさを持っている歌手だなぁ・・」

4番:ビリー・ホリデイが大好きで、あのように歌いたいという29歳女性(持ち歌:ストレーンジ フルーツ)

「まあ、真似をする相手ではないな・・ジャズ・ヴォーカルを切り開いたと言う人がいるけど、自らの人生で、あの様に歌うしかなかった、要は自分を歌をもって表現したんだ。勿論、天才的表現力は有している。自分の人生を歌えば暗くならざるを得ないな」

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5番:エセル・エニス風、30歳女性(持ち歌:エンジェル アイズ)

「黒人歌手の割にはサラットした雰囲気で独特の哀愁がある・・ONLY HAVE EYES FOR YOUを歌って欲しいな・・」

6番:チェット・ベイカーの雰囲気をもつ男性、33(持ち歌:マイ ファニー ヴァレンタイン)

「まあ、オカマ歌という評価が一般的だけど、後に残る味が・・というか後味に魅かれる歌手だ、声を楽器の様に使えるし、退廃と哀愁が入り混じっていいね」

7番:アストラッド・ジルベルトが好きと言う、女性22歳(持ち歌:ジンジ)

「おお、ボサノバ登場か、あの軽さと粋さがいいね、マイ フーリッシュ ハートなんて軽くくるけど、ジーンとくるね」

8番:サリナ・ジョーンズの物まねならば任せてという25歳女性(持ち歌:MISTY)

「サリナか・・初来日のきっかけを作ったのは僕ではなかったのかな・・・親しみある名前だし、素直に歌ってくれればいいが・・・」

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9番:ディー・ディー・ブリッジヲーターの様に歌いたいという24歳女性(持ち歌:雨にぬれても)

「アフロ ブルーでの衝撃的なデビューで期待満々、僕的には、ホレス・シルバーに捧げる、なんていいんだけど・・・でも素人が挑戦する相手ではないな・・」

10番:ニーナ・シモンを目指してなどとのたまう女性、26歳(持ち歌:ニアネス オブ ユー)

「ううううん、好きな歌のタイプだな、やはりジックリバラードでくると、のめり込んでしまう。」

以上、10人が登場した。

「もうどうにもこうにも、300人から応募が来ても、何やら物真似みたいな人が多くて、何とかそれでも10人を残したんです」とゼンさんが苦心談を話した。

「そうだね、ジャズ・ヴォーカルは何しろ英語が基本だからね、先ず歌の上手い下手もあるけど、英語がちゃんとしていないと、何を言っているのか解らないでは困るものね」と富田さんが言った。

「でも歌手の人を文字表現するというのも難しいですね」とゼンさんが悩み顔で言った。

そして内心、エッタ・ジェイムスを感じる人がいなかったことを残念に思っていた。

何しろゼンさんは、エッタ・ジェイムスの「ミスター・ボージャングル」にしびれている。

今日は決勝戦みたいなものだからということで、いつものレギュラートリオがバックをやってくれる事になった。

きっとそれだけで、怖気づく人もいるだろう。

さあ、いよいよ、始まりだ。

この中から誰を採用したらよいやら、前途多難な状況だ。

「では、1番の方どうぞ」ヨーコが声を掛けた。

そして10人の歌を聴き終えた。

ゼンさんはじめ、皆疲れた表情を浮かべていた。

オーディションとはいえ、10人もトーシロウ(素人)の歌を聴くのは疲れる。歌伴をやったピアノの河田はじめ全員が疲れている。

時間はもう5時だ。6時半には店を開けなければならない。

参加者には後日、結果をお知らせすると言うことで、一旦お引取り願った。

そこに、厨房から声がかかった、シェフの長さんが、「準備ができていますよ」

何やらいい香りがする。ゼンさんが「まあ、皆さん、一旦、母屋の居間へ移動してください」と言う。

全員で居間へ移動した。秋の5時はもう暗い。遠くのビルの窓に光がともっている。

ドアーを開けて、居間のテーブルをみて驚いた。

長さんが「今日はマツタケづくしです」と。

先ずは、どびん蒸、マツタケに加えてハモが入っている、香りがたまらない。

「さあ、飲み物は何がいいですか?」とヨーコが聞いている。

「日本酒は「八海山」ワインは今日は白が冷えていますよ、シャブリ・グラン・クリューが」と。

皆は夫々が好き勝手を注文している。

突然、何処からか、「これは今日はダータ(ただ=無料)ですか?」と、ベースの山田君だ。

「勿論、今日の疲れを癒してね」とゼンさんの大判振る舞いだ。

続いて、マツタケ焼きだ、マツタケを裂いて、ちょっとあぶって、醤油と酢橘(スダチ)で食べる、マツタケそのものの味わいだ。「このマツタケは京都産だ」と長さんが自慢した。「これだけの物はなかなか手に入らないよ、秋の贈り物だ、銀杏もいいでしょ」

「香りがたまらないね」食通の富田さんが言った。「そしてこの歯ざわりもね」と審査委員できていたデザイナーのコシタ・テツコさんが言った。

ゼンさんは、ここでCDをかけた、もうちょっと歌物ではなく、耳の休まるものが・・・。

ROSE TATTOO」フレディ・ハーバートだ。全編、ハーマンミュートでバラードを奏でる、ハーバート爛熟期の一枚だ。ピアノのケニー・バロンも落ち着いていて良いし・・・。

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みんな疲れているし、お腹もすいている。

食事がすすむ、お酒もすすむ、段々宴会気分になってきた。

最後の締めは、マツタケ入りのすき焼きとなった。おまけにご飯はマツタケご飯だ。

「お腹も満足になりましたか、遠路はるばるの方々どうですか?」とゼンさんが聞いた。

「そう、ゼンさんは良く言うよね、満腹と満足はちがうってね」と富田さんが。

これが本当の「マツタケづくしだ、シェフの長さんよくやってくれました」

<次回へまだまだ続く>

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