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2010年9月 3日 (金)

エピソード39:「またまたアフターアワーズ、深夜のジャムセッション」

<前回より懲りずに続く>

ゼンさんはジャズクラブに閉店時間は無いと思っている、まだ皆飲みながら、何やら盛り上がっている。

ゼンさんもペリエに大きなライムを入れたグラスを持ってその輪に加わった。

デザイナーのコシタ・テツコさんの連れてきた、女講釈師の神田川黄昏さんに皆でジャズとは何かを説明している最中だった。常連さんが膝を乗り出し「ジャズは先ず、沢山聴く事から始めなければ」と、船橋君が「僕に何でも聞いて親切、丁寧に手取り足取り教えてあげる」とか言っている。整形外科の日下さんが「コイツの言うことを聞いたらダメだよ、人跡未踏の地に連れて行かれてしまうから、僕のところに来なさい、そうすれば先ずは整形手術から始めるから」なんて・・・・一体何時になったら終わることやら・・・そこで止めておけばいいのに、ゼンさんが「僕がジャズ講談を創ってあげる」なんて言い出したからもうグチャグチャ状態。

講談調で、「時は1954年は雪のクリスマス・イブ、ニューヨークの片隅のとあるスタジオにはミュージシャン達が集まり始めていた。かと言ってこれから討ち入りという訳ではでは無い、パパンパンパン(扇子を叩く音)」

「イイゾ!もっとやれ!」(会場からの声)

「すません!この辺りに僕の帽子、ありませんでしたか、忘れてしまったもんで」近所の恩田さんだ。

アフターアワーズの話しがはずんでいる時に河田吾郎が急にピアノを弾き始めた、「I LOVE YOU」だ、大きなスイング感で気分の良いで出だしだ。ゼンさんはこの曲が始まるとローランド・ハナを思い出す、そう「Grove」だ。

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数曲進み、吾郎は「WILL YOU STILL BE MINE」を弾いていた・・・。階段を一人の外国人が下りてきた。

よくみるとグラディー・テイトだ。彼は東京に仕事にくると、オフの日にはよくジャズクラブに顔を出す。

飛び入りでジャムる常習犯だ。

ピアノの後ろの席に勝手に腰を下ろすと、スコッチのロックを注文した。

それを一口飲む、丁度曲が終わると、もう立ち出して、吾郎に何か囁いている。大野がドラムを叩くかと聞くと、NOと言い、マイクを持ち出した。

最初は無伴奏のスキャットから出だした、そしてインテンポへ・・・得意の「BODY & SOUL」だ。

この抑揚の少ないバラードに味を付けて歌うのは難しい、特に日本人には難しい曲だけれど、彼はネットリと甘く歌う、実にいい味だ。

ゼンさんは客席の隅をみた、DUKEさんが満足げに聞き入っている。

男性ヴォーカルはこうでないと・・・いよいよ近づくオーディションがまた思い出された。

吾郎のソロが何時に無く粘る、テイトの雰囲気が演奏者に絡み付いているのだ。

店の唯一の照明、キャンドルがこれも又何時に無く煌いている。

吉川君の新婚夫婦も深夜の初めての飛び入りの歌を珍しそうに聴いている。

今夜のアフター・アワーズも盛りだくさんに・・・・と思ったところに、また珍客来場である。何やら円筒形の楽器ケースを担いだ外人がまた入ってきた・・・グローバー・ワシントン ジュニアだ。もうソプラノのストレイトホーンを出している。

「BODY &SOUL」のピアノソロが終わったところで、グローバーが参加してきた。

場内はもうみんな大喜びだ。大野と吾郎で、テンポを倍テンに変えた。グローバーのフレーズがエキサイテイングになる、正に「BODY & SOUL」だ。

ゼンさんは考えていた、まるでNYCのジャズクラブみたいじゃないか。

グローバーは2コーラスのソロを終えるとテンポをスローに戻し、テイトの歌に入った、エンディングだ。

この1コーラスの中で何度も転調する厄介な難曲を彼らはいとも簡単にこなしてしまう。腕比べにうってつけの曲だが、そんなことはお構いなし、むしろその転調を上手く味にしてしまうあたりは一流の証だ。歌ならビリー・ホリデイ、テナーならコールマン・ホーキンス、ピアノならセロニアス・モンクが上手い。

「MONKS DREAM」に入っているのが特にいい。

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次は何をやると・・・グローバーが吾郎に聞いている。

皆なミュージシャンは演りたいのだ。

ゼンさんが「BUT NOT FOR ME」と声を掛けた、グローバーがゼンさんをチョット見て、ニヤとして、アップテンポのカウントを出した。テーマを終えてブレイクそして、グローバーのノリノリのソロに入る、思わず拍手がおきた。

お店全体がスイングしだした。

(この光景は1983年夏、「ジャスクラブ BODY & SOUL」がまだ六本木の交差点近くにあった時の実話に基づいて創作しました)

<次回に懲りずに続く>

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コメント

ゼンさん、こんばんは。

コシタ・テツコさんに神田川黄昏さん、アフターアワーズは朝を知らないようです。そろそろ謎の美女が登場するのでしょうか。高校生のころよく読んだ大藪春彦氏の小説に出てくるブリジッド・バルドーヌが好きでした。

最近、ブリジット・バルドーが老いてますます盛んで、慈善事業などで注目とか・・先般、ラジオで聴きました・・。
謎の美女・・・秘密めいて良いですね・・・しかし、お話を作る方は大変・・・さあ・・どうしよう・・・

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