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2010年9月 9日 (木)

エピソード41:「アート・ブレイキーとの出会い」

<前回より続く>

このあたりで、私とアート・ブレイキーとの出会いについて話しておこう。

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1980年冬、僕は今はもう無いジャズクラブ「MISTY」(六本木俳優座裏)にいた。

その日の演奏が終わりかけたころ、東芝オーレックス・ジャズフェスティバルで来日していた、アート・ブレイキーと当時のジャズ・メッセンジャーズのピアニスト、ジョニー・オニールが店に入ってきた。12時の演奏が終わりかけていたが、その日のピアニスト青木武弘君が彼に座を譲り、御大ブレイキーが目で指図をして、オニールが弾き始めた。

帰りかけたお客も、その日の出演者もこんな恵まれたジャムセッションはないと、こんな時は時間もギャラも忘れて、演奏が始る。

数曲進んでやおらブレイキー御大が「Time After Time」をやれという。

オニールが弾き始めた、ベースがつけて、ドラムも入って、テーマ32小節が過ぎようとしたところでブレイキーが、「No!」という、皆、演奏を止める。

ブレイキー曰く、「サビのコードが違う」というのだ。

オニールが、いくつかのコードを示すが、納得しない、ピアノの青木君までが、では、これではと・・・でも首を立てに振らない。

そんな会話が20分ほど続く、そしてブレイキーはふらっと姿を消してしまった。

残されたオニールは納得ゆかない顔をして、別な曲を弾き、もう深夜2時を廻っているのでお開きとなった。

ミュージシャン達が片付けを始めたところに、ブレイキーからオニールに電話だと店のマネジャーの加藤さんが伝えた。

どうもブレイキーは別の店にいて、そこで飲んでいるからオニールに来いと言っているらしかった。

オニールが誰か電話を変わってくれと・・・場所を説明しているらしかった。

傍にいた僕が変わりに出た、霞町の近くのピアノクラブらしい。

結局、僕の車で彼を送ることになった。

その店は直ぐにわかった。

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オニールを店に送り届けて、帰ろうとすると、ブレイキーが「ありがとう、コートを脱いで一杯飲んでゆけ」という。

僕は憧れのブレイキーから声を掛けられて、嬉しくなり、酒は飲めないけど・・と断わって、席についた。

グランドピアノを取りまくだけの10席くらいの小さなクラブで、ブレイキーの奥さんもいた。(晩年は日本人の奥さんだった。)

70歳過ぎと思われる白髪のハウスピアニストは突然の大物客に戸惑い、アガリ気味で指がこんがらかっていた。

その初老のピアニストが、ブレイキーに何を弾きますかと聞くと、ブレイキーは何でも好きな曲をやれという。

やおら弾き始めたのがデキシーの「The World is Waiting For Sunrise」だった。

演奏はもうシッチャカメッチャカで、僕が弾いたほうがましと言う出来であったが、ブレイキーは僕の顔をみて、ウインクし、親指を立てた。

心の温かい人だなあと・・感じ入った。

僕はその日、ハンカチにサインをもらった、それには「世界中に子供を沢山つくれ」と書いてあり、「パパ・ブレイキー」とあった。

もう夜が明けた5時頃に彼等を新宿の宿舎になっているホテルに送り届けたが、三流のホテルで、呼び屋の待遇の悪さに驚いた。

この時、ブレイキーと僕はいかにしてジャズが好きになったかを語り、かなり打ち解けることができた。

名刺を渡すと、翌日会社に電話があり、また今晩会おうという。

勿論、飛んでいった、彼の好きな寿司をご馳走し、またジャズクラブへゆき、話しこんだ、彼は行く先々でヒローであるが、絶対にドラムは叩かなかった。でも一緒についてゆくミュージシャンには飛び入りでやらせた、そして厳しい評価をしていた。

爾来、「ブレイキーパパ」は、日本に来ると、僕に電話をかけてきた。

一緒に食事をしようぜと。

13歳で初めて彼を聴き、ジャズの虜になり、憧れの人物であった彼とこうして個人的に話せるとは、思いもよらなかったことである。

それから数年後、アート・ブレイキー他界のニュースを新聞で知った。

あのしゃがれた温かい声が今でも忘れられない。「hi! Take off your coat

<次回へと続く>

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