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2010年10月 8日 (金)

エピソード49:「ライブレコーディング」

<前回より懲りなく続く>

ゼンさんは自宅の居間で一人ピアノを弾いていた。

[この週末、どうしても THE THRILL IS GONE を弾きたくて、でもCDから音をコピーするのも根気が続きそうにない。色々な譜面を探したが、やっと見つけた、NYの楽譜屋で購入した「JAZZ1200曲」を収録した譜面集には入っていた。メロを譜面どおり弾いてみた、サビから後半がやはりたまらない旋律をもった曲だ。自分のものにするにはまだ練習が必要だ。でもその価値はある。]

いつものことだ、今夜も「KIND OF BLUE」は夜中の1時半にようやく終わった。

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<ウエス・モンゴメリーの「フルハウス」の録音場面、クラブ「TSUBO」の場内写真、ジャケットより>

また空腹が襲ってきた。「ラーハがターヘ」(腹がへった)とスーベ(ベース)の山田君がつぶやいた。

「俺も」とヤノピ(ピアノ)の河田も。

ゼンさんが「今夜はこれからスタッフ・ミーティングをするから、母屋の夜食会に参加したら」と皆を誘った。

店内を見回すと、まだ常連の何人かいる。

「皆さんもどうぞ」と長さんが厨房から声をかけた。

母屋の居間に集合はいつものパターンだ。

「今日はおなじみの夜食、チーズリゾットですよ!」とヨーコがアナウンスした。

「冷えたシャブリがよくあうね」と富田さんがゼンさんに語りかけている。

ゼンさんが「実は今夜ここで皆にお知らせがある」と切り出した。

一瞬、テーブルが静まった。

「こんど、KIND OF BLUEでライブレコーディングをして、CDを出すことにした」

大野や河田が食べるのを中断してゼンさんの顔をみた。

「僕は、ジャズの録音はライブが原点だと思ってきた、スタジオはそれなりにいいけど、やはり仕掛けや打ち合わせで、綺麗に纏る、それはそれでもいい。一方ライブは何が起こるかわからないし、ミスもある、でもライブは活きている音が録れると思うんだ、特に最近は録音技術も良くなっているから、ジャズはライブという原則でこの店でやりたいと思っていた。正にいま、このハウストリオがとても良いまとまりを見せている、いいCDが創れると思うんだ」ゼンさんが一気に説明した。

一瞬静寂がはしった、そして、どこからとなく、拍手がおきた。

ゼンさんは続けた「企画は3つある、三枚創る、レーベルはこの会社から出す」

ここでどよめきが起きた。「エッ、この会社のレーベルって?」デザイナーのコシタ・テツコさんが声をだした。

「そう、このライブハウスはご存知の通り、投資会社である親会社の経営で運営されている、だから店の売上げ以上の投資が可能なわけだ(この話はこのBLOGの最初に書かれている)。親会社の名前は(株)BLUE IN GREEN、通称『BIG』だ。このBIGをレーベルの名称にする。会社の定款にもこうなると予測して、投資コンサル以外に「音楽事業の企画、制作、また出版」を登記してあるのだ」と説明を続けた。

富田さんが「ゼンさん、準備がいいね」と。

「それで相談だ、僕はいま3つの企画があると言った、最初にピアノトリオで出す、第二弾はこれにペットとテナーを加えてクインテットで、第三弾はピアノトリオにヴォーカルだ。『LIVE AT KIND OF BLUE』シリーズだ。

「何も特別仕掛けはしない、いつも通りのお店の雰囲気で録音をしたい、それから、ジャケットのデザインだけど、イラストレーターの京子ちゃんとプロの写真家廣瀬さんにお願いしたいと思う」

もう30畳もある広い居間に熱気が漂いはじめている。

大野が「嬉しいな、是非やってみたかった、LIVE RECORDINGを」、河田が「そうだね、気取らずに、自然体の音でいつもの音でやりたいね」

「録音はいつやりますか」と山ちゃんが聞いた。

「先ずはこのレギュラー・トリオだから、来週までに曲目の編成くらい決めようか、でも意識した練習は無しだ、マイルスはスタジオ録音ですら事前練習を嫌ったというじゃないか、そのくらいジャズの即興性に重きをおいたのだよ、ライブはその即興性が完全にでるからいいんだ」ゼンさんは自分の説明に酔っていた。

「ところで、コメントを書いたり、BLOGを覗いておられる皆さん、ジャズでライブ盤のBEST3というと何を挙げますか?」ゼンさんがまたまたお題を出した。

「じゃあ、ゼンさんは何を挙げるの?」と言う声がした。

ゼンさんはリゾットをほおばりながら、「ウーン・・・と言われると結構難しいな、50年代前半は録音技術がまだ悪く、音質は良くないけど、内容のよいものは沢山あるね、JMのバードランド盤とか、50年代後半から60年代になると、そうエバンスのヴィレッジ・バンガード盤やピーターソンのロンドンハウス盤、マイルス初のライブのブラック・ホーク盤などがあるね・・ケニー・バロンのブラッドレイズ盤も最近よく聴くな・・いずれも、ライブハウスの場内の雑音まで入っていてね、お皿を運ぶ音とか、人の話し声とかね、これがいいんだね、雰囲気がいい、そして徐々にお客が音に吸い込まれ、集中してゆくのが手に取るように分かる、これがライブ盤の良さだ。日本だとTBMが「MISTY」で録音したシリーズなどがいいね、TBMもジャズはライブハウスが一番ということを分かっていたんだね、コンサートとはまた違うんだ」

(TBMのMISTYでの実況盤、山本剛トリオ、TBMのライブレコーディングは臨場感に優れており正にその場にいる感覚である。因みにTBMの「MISTY」でのライブレコーディングは3枚あるが何れも筆者は現場に居合わせた)

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「ライブBEST3もお願いします、加えて、このトリオに何をやらせますか・・曲目、編成のアイディアもお寄せください、企画に組込みたいので、宜しくお願いします」とゼンさんの独演会は続く。

河田吾郎や大野もまんざらでない様子だ。

<まだまだ続く>

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