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2010年10月22日 (金)

エピソード56:「スペシャルゲスト ピート・ジョリー登場」

<前回よりまだまだ続く・・・>

ジャズ・クラブ「KIND OF BLUE」のドアーにゼンさんが、何やら張り紙を貼っている。

「ONE NIGHT STAND SPECIAL GUEST  

THE PETE JOLLY TRIO」

このイヴェントはお店のスタッフしか知らない。これはゼンさんの主義、前から宣伝をすれば、始まる前からお店は満員になる、でも飛びっきりのゲストが出る日も普通の自然体でお店を開けたいのだ。

7時に音出し、でも最初のステージはいつものハウストリオ、p河田、b山田、d大野のメンバーで始った。

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そして、8時からは、今日の特別ゲストだ。8分の入りのお店のお客がざわついている。

「エッ、今日は特別ゲストにピート・ジョリー・トリオだって、凄いのが出るんだ」

「でもピート・ジョリーってウエストコーストのピアノで「リトル・バード」なんてヒットしたよね」とか・・・テーブルではこの名前は知っている、少しはレコードで聴いたことがある・・そんな話が交わされていた。

「でも、聴いたところでは、ちょっと軽いタッチだよね」などと言う。

ゼンさんがメンバーを紹介した、

Ladies & gentlemen, tonight we have a one night stand special guests!  one and only!,

Pete Jolly Trio!  Chuck Berghofer on bass, Nick Ceroli on drums, and great  

Pete Jolly !

一斉に大きな拍手がおきた、そして第一音がでた。

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「MILESTONE」だ・・軽快にテーマが始ったが・・・テーマの解釈が面白い、サビ部分は無い、モードの曲でありながら、モードを感じさせない、むしろバップフレーズが満載でスイングする。

お客の反応が面白い、もっと軽い感じでくると思っていたのだろう。

ピートのアドリブがアグレッシブだ、レコードで聴くテーマのフェイクで終わらせるようなソロではない、べースがまた強い音で4ビートで引っ張る、強烈なランニングベースだ。

もう一曲目で皆の身体が自然に動き出している、切れないフレースで何時までもスイングする。

・・・と思いきや、アッと言わせる音の空白、見事だ。

華麗なるバッパーという感じだ。

最初の「MILESTONE」が終わった時、お客さんから思わず感嘆の声がもれた。

お客の会話でざわつく店内、ピートはかまわず次のイントロを弾き始めた。

「TEA FOR TWO」だ、アップテンポでテーマの解釈とフェイクがピート独特のもので洒落ているし、思わずニヤッとさせるメロディーを挟む。

今度はベースをフィーチュアしている、このベースはゼンさんも聴いたことが無かったが、ランニングベースだけで聴かせてしまう、図太いベースだ。

ピートがグングンと盛り上げる、これでもかと盛り上げる、そこでピッタとピアノが抜ける、ベースの音が残る、この間がなんともいえない。

お店中の人がもう完全に虜となって音に引き込まれている。

三曲目の「THAT OLD DEVIL MOON」も聴く者の琴線を響かすテーマを弾く。

四曲目は「DONT‘T WORRY ABOUT ME」ここまでで、もう皆がピートに関する既成概念は吹っ飛んでいた。

ついに、五曲目でもうスイング感が極致になった、これを聴いて思わず踊り出してもおかしくない、いや、むしろそれが自然だ。

「STARS AND STRIPES FOREVER」つまり「星条旗よ永遠なれ」だ、そう良く聴く有名なマーチだ。

最初は何が始ったか・・・「ブルースマーチ」でもと思ったら、4ビートでスイングする「星条旗よ永遠なれ」だ。

音の強弱もスイング感には肝要だがこれがまた絶妙な切り替えで、聴く者を吸い込んでゆく。

ゼンさんはカウンターの横で立って聴いていたが思わず指を鳴らし、「イエッ!」の連続である。

ユーモア、意外性、粒の揃った音、粋なフレーズの連続、大きなスイング感、

そして、思わず笑えるエンディング、なんと楽しい演奏だろうか。

ジャズは楽しいでも美しいは次の曲で証明された。

「I SHOULD CARE」この美しい原曲をより一層磨きを掛けてテーマを弾いた。

ただ、楽しく、大きく、スイングさせるだけではない、このようなバラードを弾かせても、その強弱、陰陽、そして間の取り方・・技巧派であるテクニシャンであるがそれをひけらかせない。

またまたエンディングまでお見事!と言う演奏であった。

お客が納得しない、大きな拍手が鳴り止まない。

やおらアンコールが始った。

それはブギウギ調の左手のストライドで始った・・・何が出てくるかもう魔法の玉手箱みたである・・おお!

「HEY JUDE」がブギウギで4ビートに乗って展開される、このノリでの「HEY JUDE」は聴いたことが無い・・が左手がコードで4つを刻み、右手がビハインド・ザ・ビートでアドリブを展開する。

何か、アーマッド・ジャマールとエロール・ガーナーの特長も併せ持ったような感じだ、それに三連符が気持ちよく絡む、ウイントン・ケリーの三連符とはまた違う白人のもつサラッとしているが微妙な後ノリのリズムがクセになりそうである。

お客が皆身体が動き出し、店中が踊っているようだ。

だれがピート・ジョリーは軽いし、ハードなアドリブはやらないと言ったのだろうか、とんでもない誤解である。

こんなに見事に、ハードにスイングし、また美しい音と綺麗なフレーズの連続、ライブなのにミスタッチは一音もない完璧さ・・・何度でも聴きたくなる演奏、それがピート・ジョリーだった。

今夜の「KIND OF BLUE」はきっと止まらないだろう、きっと疲れ果てるまで・・。

<この話は1969年7月にLAの郊外のジャズクラブ、「Donte‘s」でライブ録音された、PETE JOLLY TRIOの「TIMELESS」というCDにインスパイアーされて書いたものです。>

<この興奮は次回へ続くのだ!>

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