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2010年10月25日 (月)

エピソード57:「ウエス・モンゴメリーが飛び入り!」

<前回よりますます続く・・・妄想のジャズセッション・・架空のジャズクラブ「Kind of Blue」で繰り広げられる狂気・・>

晩秋のとある金曜日、「KIND OF BLUE」は満員のお客さんで溢れていた。

気候も涼しくなり、秋の夜風に吹かれて、ジャズ好きが浮かれ出てきた。

河田吾郎のピアノも大野のドラムもいつになく弾んでいる。

「Sometimes I‘m Happy」をミディアム・ファーストで流麗にスイングさせている時に、階段を下りてくる大柄な黒人がいた、手には楽器のケースを提げている。

ゼンさんが満員の中から座れるスペースをピアノの後ろの常連席につくった。

彼は大きな身体を小さくして座った、そして楽器のケースを指して、「良いか?」と目でゼンさんに合図を送った。

ゼンさんが小さく頷いて、リーダーのドラムの大野を目で指した。

彼はそれだけで理解し、演奏中のドラマーを横から見た、ドラムの大野も小さく頷いた。

これは飛び入りで加わる際の礼儀と合図だ。

彼は楽器のケースを開けた、中からギターが出てきた。

やがて曲はエンディングに入り、べースの山田君がエンディングを作って終わった。

ヤンヤの喝采で常連をはじめ、お店が乗りはじめている。

ピアノの河田が振り向いた、「いったい飛び入りは誰だろうか?」と顔を見て、驚いて握手をした。

山田君は未だ気がついていない、ギターのアンプをピアノの下から引き出すのを手伝っている。

そして大野につぶやく声で「あれって、そうですか?」と目を見開いている。

大野がニヤッとして頷いた。

彼はギターをアンプにつなぎ、音を出した、直ぐにピアノが調音の音をだして、直ぐにチューニングは終わった。

彼がしゃがれ声で言った「F」、そして指でギターのボディとトントンと叩いてアップテンポを指示した。

柔らかい音と快適なテンポでテーマが始まった。

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「Impression」だ。

Fのキーで1コーラス、テーマを弾き、直ぐに2コラース目にはG♭へ転調した。そして、コードを刻みながらテーマを弾き、ソロに入った。

河田のピアノが三連符で絡んでゆく。絡みながら、彼のフレーズの後を追う、絶妙の呼吸だ。

ジャズは飛び入りでも直ぐに呼吸が合う・・これができるから気持ちもいいし、一流の証だ。

ピックを使わない、指ではじく奏法だ、それだけ音がソフトになるし、深みがでる。

そう、今飛び入りで弾いているギターリストは・・・ウエス・モンゴメリー!

バックのリズムセクションが気持ちよく弾む、ベースの若い山田君ですら、思い切り低音を弾いている。

ドラムの大野はレガートでスイングさせている、もう余分なことはしないでも、大きなスイング感の中に入りつつあるのが分かる。

ウエスがコードを親指で連続的にシンコペーションをとらまえて刻む、「ザッ、ザッ、ズワーン」柔らかいけど、深く、グルービーな音質でファンキーだ、「イェー!」

そして再度転調だ、二度にわたり半音づつ、A♭までいった。

そして、ウエス独特のオクターブ奏法を交えて、5コーラスを過ぎてソロを河田に渡した。

ギターとピアノが一緒にやると音質が似て変な音のかち合いが起こる、しかしこれがない、上手く相手の隙間にフィルインが入る、これが小気味いい。

河田のピアノがいつになく、よくころがる、途切れのないスイング感とグルーブ感がこれでもかと押し寄せる。

聴衆の身体がみんな動いている、揺れている・・・。

ピアノのソロが終わったところで、ギターがリフを即興でつくった。

半音階づつの3連符の上昇進行のコードだ、「ザッザッザッ、ザッザッザッ・・・・」

と思ったら、半音下降進行だ、そして元のFのキーに戻した。

微妙に付点8分が絡む・・・プレイヤーも聴衆も一瞬呼吸を止める瞬間だ、そして、シンバルのクラッシュを合図にベースがまた快適にラニングに入る。

店内は、得もいえぬグルーブ感と至福に包まれた。

ウエスはやおらテーマに戻った、その瞬間にバックがピアニシッモに、ギターのシングルトーンが浮き出た。

シンプルなメロが素直に耳に入ってくる。

エンディングは二度繰り返し、フェルマータとリットーで、フォルテに盛り上げて決めた。

店内は拍手と歓声の渦だ、皆が立ち上がって拍手をしている。

ウエスが立ち上がり、右手でギターを握り高く掲げて応えた、その瞬間にスーット、彼の姿が消えた。

姿が消えても暫く、拍手は鳴り止まなかった、ドラムの大野も、ピアノの河田もベースの山田も拍手をしている・・。

そして、河田が静かに弾き始めた・・・「WILLOW WEEP FOR ME」これもウエスの好きな曲だ。

黒っぽい、ブルージーな「WILLOW・・・」が始まった、誰もいま起こったことを疑わなかった、ウエスが来て目の前で演奏したと・・。

アノ世からの飛び入りだ・・。

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ジャズ・ギターで最初のオクターブ奏法をやったウエス・モンゴメリー、譜面を読むのが苦手で、全て一回聞けば全て暗記してしまったという。

ジャズ・クラブ、「Half Note」でのウイントン・ケリー+チェンバース+コブとの伝説的なライブ・・・もうスイングが止まらない・・ノッタら止まらないウエスとケリー、そんな白熱した演奏を聴きたければ・・・この盤しかない!

>>>>>2010年10月25日掲載

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