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2010年11月17日 (水)

エピソード65:「無頼庵 青紫朗という男」の巻ー

<前号より続く>

(空想と幻想と思いつき、架空のジャズクラブ「KIND OF BLUE」へようこそ。幸か不幸か、貴方は下らない口から出まかせ、推敲なし、校正無しのお話に付き合わせれることになる。中傷誹謗、罵詈雑言多いに結構、灰皿投げるも、布団を投げるも多いに結構・・・しかし、コメント欄にお世辞の一言くらいは書き残すが礼儀・・・・ナンチャッテ、またまた続くデタラメJAZZブログなのであります。

金曜の演奏時間はとうに過ぎ、もう夜中の1時半を廻っていた。

しかし「KIND OF BLUE」の店内はまだ熱気に溢れかえっていた。

飛び入りでソプラノでブルースを吹き始めた男は続いて帯に挟んでいた脇差の様なものを取り出すと、濃い紫の筒状の袋から竹の横笛を取り出した。

やおら、曲目も言わず、吹き出したメロディーは「オレオ」だ。

でもこの日本の民族楽器でもある竹製の横笛(篠笛)はフルートと違い、かすれた音を伴い独特の音質を産みだしていたが、音程は安定しフルート以上に西洋音階をとらえていた。

さすがに吾郎達だ、キーを捜しだし、伴奏に入った、キーはD♭だ。

Mikagura

読者にはこの男の素性を紹介しよう。

すでにかなり以前、マスターのゼンさんの学生時代の仲間が店に来てはジャムっていたことをご存知だろう。

そのうちの一人、天才アルトの太田君がこの人物だ。

彼は大学を卒業し、警察に入った、公安の特殊な部門ゆえ、仕事の事は言えないといいながら、天才的なジャズセンスをもった太田君はアルトを抱えてよく店に遊びにきていた。そんなシーンも覚えている方もいらっしゃるだろう。

彼は今年定年になった。警察を辞め、これからどうしようかとゼンさんのところに話にきていた。

どうせ独り身の太田は、いよいよジャズをやりたいと言い出した。

「今、どこのジャズクラブ行っても、軟弱なジャズというか、聴いていられない音が多い、俺は今更プロになって稼ごうとは思わない・・が・・だっ、少々渇を入れてやりたい」という。

退職金をゼンさんのファンドに預けて、全国のジャズクラブを廻りたいというのだ。

そのいでたちがこの格好だ。

「無頼庵 青紫朗」

しかし、今までの職業柄、目は鋭く、公安刑事の勘も優れている、そんな「気」を消すように突拍子もない格好を思いついたのだ。

今夜はそのデビュー最初の夜であった。

Sinobue

篠笛、バンブーフルートの音色は益々冴え渡った。

早いフレーズと「間」、そして一瞬を切り取る鋭い一音、それに素早く反応するピアノとドラム、ベースはいつも以上に低音部を強調し、コントラストをつける。

音にも陰影があることが見えてくる。

ピアノとベースとドラムが一体となった大きな弧を描くスイングをたたき出す、その上で篠笛の音が渦を巻き始める。

3コーラス目からはフリーの世界になっている。

聴衆は不思議な心地よい感覚に取りこまれ、闇の中から一閃の光が迫ってくる錯覚に入る、否、錯覚なのだろうか・・・・アクアマリーンのような透明感のある光が闇の中から迫り来る、眩しい限りの輝度で、でも目はシッカリとその光を見ている。光が見える・・・・。

ピアノ、ベース、ドラムが篠笛とのインプロビゼーションで会話を続けるうちに、心を素直に音に集中させると奏者は自然に音に反応させられてしまう。手が音を自然に選んでしまうのだ。

もし、素直に音が聴けないと、その奏者の手は凍りついたように動かなくなり、何も出来ないで、ただただ無力感と敗北感にさいなまれるだろう。

しかし、ここで演奏している三人は素直にその音に入っていった。そして自然反応の如く、互いの音からインスピレーションを受け、インプロバイズされた感性から素直な音を出していた。

「音」というものがこの自然界というか宇宙にあって、空気の振動である物理現象であり、その振動は瞬間に伝播し人の心、すなわち、奏者や聴衆をも振動させエネルギーに昇華させる。

それは例えれば、ジョン・コルトレーンとエリック・ドルフィーの相互インプロビゼーションにも聴けるといえば良いのだろうか・・。

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篠笛が静かに低音部へと降りてゆき、「オレオ」のテーマに戻ったところで、聴衆は我に帰った。

この混沌なのか秩序なのか・・・不思議な時空の中で異様な「光」を見た。

テーマが終っても暫くは、店内は静まったままだった、皆の顔は満ち足りた顔をしていた。

深呼吸ともつかぬ、ため息のあと、大きな拍手が起きた。

それは、賞賛の拍手ではなく、感謝の拍手に聴こえた。

それこそ、後年、「月光奏法」と名づけられた、無頼庵 青紫朗の独特の奏法であった。

彼は、静かに篠笛を鞘袋にしまい、帯に挿し、一礼をした。

共演をつとめた三人も満足感に浸っていた。

ソプラノ・サックスを筒にしまい、まるで佐々木小次郎の如くそれを斜めに背に負うて、篠笛を脇差の如く、さあ、無頼庵・青紫朗はこれから何処へゆくのだろうか・・・・。

その日、青紫朗はまだ「スパイラル・キラー・サウンド」は吹いていなかった。

<ジャーン、次回に続く>

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コメント

MIXIから飛んできました。
おもしろく興味深く、読ませていただきました。
「読み逃げ厳禁」とのことですので(笑)、恐れながらコメント差し上げます。

推敲なし!と、おっしゃっておられるにしてはなかなかの名文で、またその内容にもいたく感動しました。
私もそんな「場」に居合わせたいものだと思いました。

自分よがりのストーリーゆえ、気の向くままの拙文です。
しかし、自分の想像の中で、コウだったら良いなぁ・・というお話にしております。

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