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2010年11月 2日 (火)

エピソード61:「野人ピアニストの登場」

<前回よりドンドン続く・・・>

ゼンさんは晩秋の気候を感じつつ、久々の休日を陽だまりの中で過ごしていた。

転寝をするゼンさんの夢に・・・「やあ、久しぶりだね」と語りかけてくる、褐色の肌、口ひげをたくわえ、外人にしてはそんな大柄ではない。

「おう、ボビーじゃないか」

ボビーと会ったのは、1984年10月頃だったか・・。

とある行き着けのジャズクラブは混みあっていた。

その外人はゼンさんの隣に一人で座った。

演奏の休憩時間に、話しかけてきた。「オレはフィリピンやハワイで弾いているジャズピアニストなんだ」

「ヘェー、どんなピアノを弾いているの?」

「ピーターソンやトゥループの様な・・」

「トゥループって、ボビー・トゥループのこと、ジュリーの旦那?」

「そうだ」

そんな会話をしているうちに、今夜飛び入りで弾かせてくれるかな・・・と、そしてミュージシャン達と友人なら話をつけてくれよという。

ゼンさんは、その日のリーダー、サックスのRに話をした。

そして、Rはそのピアニストを途中で呼びだすことにした、彼は満足げだった。

一曲終わって、その呼び出しがあった、「今日は突然の飛び入りゲストがいます、ハワイで活躍しているピアニスト、ボビー・エンリケスさん、どうぞ!」

そんな名前は誰も知らない。

「何をやる?」

「BUT NOT FOR ME」

「キーは、テンポは?」

恐ろしい早いテンポを指示した。

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それから先は曲芸だった。

ゲンコツ弾き、肘打ち、足弾き・・・お客は喜んだ、そんなデタラメをしながらも、アドリブはピッタリ合っているし、スイングする。

バンド全員がノラざるを得ない、ベースもドラムも必死でそのテンポについていっている。

ベテランサックスのRは負けじと早いフレーズを繰りだす。

その日は無事終わった。

翌日、そのクラブから近い別のクラブにゼンさんはいた、そこにまた、あのボビーがやってきた。

「昨日はどうも」

「やあ」と握手をして、その晩も飛び入りをしてお客を湧かせた。

そして、その晩のアフターアワーズで、ボビーはゼンさんに飛んでもないことを尋ねてきた。

「レコーディングをしたいのだ、頼むから、お願い」と。

「僕は音楽関係者ではないよ、ただの客だよ」といってもだめ。

「だって、クラブのオーナーも仲がよさそうだし、ミュージシャンもよく知っているし・・じゃあ、紹介してよ、レコード会社の人を」

これには参った。

その日から毎日このボビーはジャズクラブに出没し、何度も遭遇す、居ない時にはゼンさんの名をかたり、飛び入りを続けた。

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1ヶ月後、ボビーから連絡があった、「レコーディングができることになった、ありがとう!」

「それはよかったね、アルバムタイトルはアクロバティック・ジャズか?」と応えて、大丈夫かなと・・・心配をした。

後日それがリリースされた。

ゼンさんは転寝から目が覚めた。

<次回に凝りなく続く>

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コメント

「アルバムタイトルはアクロバティック・ジャズか?」

このくだりが なんとも可笑しいですgood

jazzmadjiroさん

エンリケスのDVDがあります、リッチー・コールと北欧のクラブでのライブ映像で一人浮いています。(笑)

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