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2010年12月 7日 (火)

エピソード70:「無頼庵青紫朗 白熱の共演の巻」

<街にはクリスマスの装飾が・・そうなると直ぐに門松が・・・巷はあわただしい年末の様相だ!!!>

ジャズクラブ「KIND OF BLUE」にも年末の喧騒が入り込んでくる。

特にイヴェントを企画する訳ではないが常連はいつものように集まってきた。

クリスマスに忘年会・・・特別なことがある訳ではないのに、師走という空気を感じる。

「さあ、そろそろゆくか」とリーダーの大野が声を掛けた。

ピアノの河田吾郎がブロックコードを叩いた、ベースの山田と大野がすかさずミディアムスローでバックをつけた、「サテンドール」からの始まりだ。

落ち着いたフレーズで大きくスイングしている、まるで亡くなったピーターソンに捧げているような雰囲気だ。次第に音数が増してくる、密度の高い音でウネリを作り出す、粘っこいスイングに練りあがってくる、そこでテンポが倍になる、ここからは超アップテンポになる切れの良いシングルトーンフレーズが途切れなく続く、2コーラスをアップテンポで進み、二拍三連を二小節続けてもとのテンポに戻った・・・ここで拍手がきた。

一曲目からみなノッテいる。

そんな時、階段を濃い青紫色の着流し姿で階段を降りてきたのは無頼庵・青紫朗だ。

みな、もう彼が何者か分かっている(実は分かっていないのだが・・・)、都内のライブハウスに飛入りして演奏者の度肝を抜いたらしいが、演奏の内容が刺激的ではあるがジャズ以外の何ものでもない、むしろ本質をついた音を出すのでその場に居合わせた人たちはかなり喜んだらしい。

但し、いい加減な音で対応した共演者は例によって、月光奏法(Spiral Killer Sound)により金縛りにあい一音も出せなかったと噂が飛んでいた。

彼は一人の連れを伴って入ってきた。

細身の黒人でボルサリーノを目深にかぶり静かな雰囲気をもっていた。

ドラムの大野が声を掛けた、「何かやりますか?」

青紫朗は帯から脇差風の篠笛を袋から取り出した、「彼も一緒にいいか?」と大野に聞いた。

「彼も何かやるのですか?」「うん」それしか言わなかった。

その彼はポケットから小さな楽器を取り出した。

お客が少しざわめいた、「何あれ?」と見慣れない楽器だ。

「もの知りの富田さんがいった、ポケット・トランペットだ!」

青紫朗が吾郎にキーを囁いた、スリーピーの篠笛とポケットトランペットがユニゾンでテーマを吹き出した。「WELL YOU NEEDT」だ。

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その男はポケットトランペットにミュートをつけていた。

テンポの間合いがタイトだ、リズムとフレーズの乗りに緩んだ間がない、間はあるが100分の1拍すら感じさせる演奏だ。

ソロは最初は青紫朗がとった、45センチの篠笛でD♭がベースキーになっている。

ロングトーンはあくまで澄んだ音色を震わせ、早いパッセージではキレの良いフレーズを吹いた。

和笛にある音程の不安定さは無い、むしろ吹き込む息つかいが音色にかぶって緊張感を高める。

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2コーラスが終わって次にポケットトランペットが登場した。

そのノリはリズムの微妙なタイミングに音を置いてゆくようなフレーズだった。

まるでモンクがペットを吹いたらこんな音のおき方になるのではと思うような、ノリだ。

でも不思議なスイング感をもっているし、フレーズと音色はブルージーだ。

2コーラスが終わってテーマに戻った、青紫朗の篠笛がメロをとりポケット・トランペットがオブリガートを絡めた、そして最終のメロをペットが篠笛を追って最終音でピッタと一致して終わった。

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場内は心地よい緊張から解きほぐされた、そして拍手が起きた。

ゼンさんが皆に紹介した「ドン・チェリー!」

お客が顔を見合わせた、その男がシャイなのだろう、恥ずかしそうに会釈をした。

そう、ペットのドロフィーとでも言えばよいだろうか、モヒカン刈でカムバックしたロリンズを一層過激にインスパイアーしつづけた「OUR MAN IN JAZZ」での存在はいまだに新鮮であり、鮮烈である。

でも一方においては、シンプルなブルースを温かい音でやさしく吹く男でもある。

ドロフィーはコルトレーンを触発しドン・チェリーはロリンズを触発した。

のみならず、彼は色々なセッションで周囲を煽り、インスパイアーしつづけた、サラ・ボーンは彼とブルースを演奏するのが好きだった。

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KIND OF BLUE」の年末の飛入りゲストはドン・チェリーだった。

ゼンさんが無頼庵・青紫朗に話し掛けた「今夜店が終わったら久し振りに母屋で夜食会にでも参加していってよ、他のライブハウスでの出来事も知りたいし・・」

「いいさ、まだ年末気分だ」と無頼庵・青紫朗が応えた。

<次回に続く>

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みなさん、今年も、荒唐無稽、いい加減なヨタ話にお付き合いのほど、隅からスミまで、ずずーぃっと、宜しく御願い奉りますぅー!

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コメント

大変興味深く、面白く読ませていただきました。
エピソード70を読んで、ジャズマン同士でが言葉ではなく、楽器で自然に話を続けていく様子がよく分かりました。shinさん以外の誰からも聞くことが出来ない、貴重なお話だと思います。

Akiさん

お世辞ともらい物に弱いので、このようなコメントを頂くともう有頂天であります。(笑)
ここで書く世界は、自分がこうあったら良いなと思う妄想ストーリーです。
駄文、ヨタ話にお付き合い頂きありがとうございます。
今後とも宜しくお願いします。

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