« エピソード67:「篠笛」の巻 | トップページ | エピソード69:「ブルースの真実」の巻 »

2010年12月 1日 (水)

エピソード68:「無頼庵・青紫朗・ジャズ無頼帖 オーディオを斬る」の巻

おかげさまで、何とか書き続けています。

これも、お閑で酔狂で物好きな皆様のお陰です。

遠くは北海道や沖縄、いや、欧米や豪州から・・・。

相変わらずの校正、推敲なしの書きなぐり、誇大妄想、ウソとホントのミックスジュース。

お知恵、アイディアはいつでも頂きます、アイデイア料はお払いしません。念のため。

批難、中傷、誹謗、絶賛、大歓迎!

<前回より続く>

青紫朗は、寒波の押し寄せる黄昏時、中央線沿線のとある駅前を歩いていた。

路地を覗くと「JAZZ」という大文字の看板が目に飛び込んできた。

ふらっと、扉を開けた。

途轍もない音量が耳をつんざく、店内に客は僅かに3人。

青紫朗は静かに空いていた隅の席についた。

店の主と思わしき人物が愛想も無く、傍に立った、「マティーニ、ドライ・マティーニ」と耳元で繰り返した。主は首をかしげながら、遠ざかった。

店内にはセロニアス・モンク「ミステリーオソ」が流れている、ジョニー・グリフィンの金属音テナーの後ろでコードを叩くモンクの姿が浮かぶ。

しかし、いかにせん、音量が大きすぎる、本物の音より大きい。

オーディオには疎い青紫朗にもスピーカーがJBLパラゴンであることくらいはわかった。

51ddubd3jol__ss500_

その時、マティーニが机の上に無言で置かれた。

一口マティーニを舐めた、甘い・・・味にシマリがない、この音と同じだ。

たしか、ドライと言葉を加えたはずなのにと思った。

店内はジャズ喫茶特有のレイアウトで、典型的な配置、椅子はみなスピーカーに対座している。

アルバムが変わった、「スリー ブラインド マイス」、ジミー・メリットのベースのイントロが始まり、シダー・ウオルトンが加わり、ブレイキーがレガートを付け始めた。

三管編成のテーマが始まった・・・しかし何だこの音は、実際より音量が大きいだけではない、音質が違う、実際にコンサートで同じ編成を生で聴いたことがある青紫朗は「ちがう!」と声を出した。

主と思わしき人が近づいてきた、「お客さん、お静かに」

「こんな音が静かに聴けるか」

他の三人の客が振り向いた。

ウエイン・ショーターがソロを取っている・・・しかし、ショーターの音色ではない。

Jazzbook0924_086

「うちのオーディオは都内でも有名な装置だ、この音に文句つける奴は初めてだ!」

主が息巻いている。

「どうだ、このクリアーさ、低音の伸び、最高音だって割れずにシッカリと伸びているだろう、シッカリ聴け」

「しかし、ショーターの音色はこんなに角ばっちゃいない、もっと角の丸い音色だ、それにこのマウスピースはまるでメタルマウスピースの音だな、この時はショーターはハードラバーだと思うが・・・・」

「なにお、聞いたようなことをいいやがって、俺の店にケチつけにきたのか、代金は要らないから、さっさと帰ってくれ」

「いや、帰りたいのはこっちの方だが、この音が本物だと思って聴いているお客さんが気の毒だな」

「ショーターの本物の音って?」とお客が声を張り上げた。

「もっと太い、低音がバリバリとくる音だ」

「なにお、この当時の本物の音が何だか知っているのか、エッー、分かってない奴はこれだから困る」と主が言う。

「この同じ編成で来日したとき、私は最前列で聴いている、1963年の時だ、曲も同じものを聴いている」

ソロがハーバートに変わった。ブレイキーが煽る、ハーバートの高音がヒットした。

「ハーバートの音はもっと輝きをもっているな」

「・・・・・」主は無言になった。

「なら、どんな音が本物の音だというんだ」

それから暫く、音を少し落とせとか、低音にシャを被せてとか、スピーカーの中に人がいるみたいだ、もっと距離感をだせとか・・・30分ほど続いた。

「少しはましになったな」

「しかし、これでは音がボケて聴こえないかな・・」と主。

「ピアノトリオでも聴いてみろ、一目瞭然だ!」

アルバムがピーターソンに変わった。

「ナイト トレーン」だ。

1004_026

お客の一人が思わず「ああ、ピアノがそこにあるみたいだ、ベースもドラムもしっかりと識別して聴こえる」

主が不思議な顔をして聴いている。

「どうだ、ピアノの中に頭を入れて聴く客はいないだろう、これがピアノから数メーター離れて聴く音だ」

「では・・・本物の音より良い音など無い」

主が気がつくと、不思議な風体の男の姿はなく、テーブルの上に1万円札が一枚とメモが置いてあった。

メモには「ハンク・モブレイを聴け」と・・・。

<続く>

« エピソード67:「篠笛」の巻 | トップページ | エピソード69:「ブルースの真実」の巻 »

「音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1371081/37915040

この記事へのトラックバック一覧です: エピソード68:「無頼庵・青紫朗・ジャズ無頼帖 オーディオを斬る」の巻:

« エピソード67:「篠笛」の巻 | トップページ | エピソード69:「ブルースの真実」の巻 »